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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈黒竜篇〉-7

「瑛琳!」

呼ばれてすぐに瑛琳は現れ、カルサからそっとリュナを引き受けた。

「頼む。」

「任せてください。」

そう言葉を残して瑛琳はリュナとともに消えた。それと引き替えに千羅がカルサの脇に現れる。

「千羅、油断するな。」

「皇子…これは、まさか?」

カルサの顔に緊張が走る。目は鋭くなり殺気がむきだしになった。千羅もそれに続くように身構える。

黒い煙は人の形を作り、深紅の目が開いた瞬間、姿が明らかになった。

「やっと…この時が来た…。」

黒い長髪の男は満足そうに笑い、自分の両手を眺めた。そして月明かりに気付き、月を見上げる。

「申し分ない。」

様子を伺うカルサと千羅に目をやり不適な笑みを浮かべた。吟味するように目を細めやがてひとつの結論をだした。

「…見覚えのある顔だな。いや、顔というより雰囲気か。」

暗闇の中から現れた漆黒の装いに深紅の瞳の男。カルサにはその正体が分かっていた、というよりも正体に気付いた。自分の顔をみて言った言葉の意味に気付いたから。

「黒の竜王…フェスラ、だな。」

「ほぅ。」

「黒の竜王?この男が…オフカルス神官の一人、黒竜フェスラ。」

カルサの言葉に黒の竜王フェスラは感心し、千羅は衝撃の事実に驚いた。

それと同時に力が入る。何の目的なのか、まともに戦って勝てる相手ではない。

「私を知っているとは、オフカルス縁の者だな。それに、その雰囲気に妙に覚えがある…貴様…何者だ?」

「知らないのならそれだけの縁だという事だ。それよりどういうつもりだ?ここに何の用がある。」

「何やら気分を害してしまったかな?」

「人の女を【出口】に使うとはどういうつもりだと聞いている!」

カルサの殺気にもかかわらず終始フェスラは余裕を構えていた。まるで嘲笑うかのようにゆっくりと、含みを持たせて話す。

「女、か。知らぬ事。ただあの女がいた、だからお前の言う【出口】に使ったまでのこと、私が呼び寄せたわけではない。」

「あの亜空間に自ら行けるわけがないだろう!」

「真実を言ったまで。私は呼び寄せてはいない。」

カルサはフェスラの言葉に考え込んだ。リュナが自分から行けるはずがない、じゃあ他の誰かが呼び寄せたのか?誰が、何の為に、何故リュナを?この疑問が頭の中をよぎる。


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