よみがえりの木-6
三年前。
ちょうど蘭の結婚式の半年ほど前に、メイは美奈から相談を受けていた。
許されないことをしてしまった、どうしよう、と。
「わかっていたのよ、悪いことだって。でも、こんなに男の人のこと好きになったの、初めてなの」
美奈は、高原和輝と体の関係を持っていた。
それも、蘭がメイたちに婚約者として彼を紹介してくれた、その日のうちに。
実際、魅力的な男ではあった。
雑誌から抜け出てきたモデルのような容姿で、大企業に勤め、豪華なマンションに暮らし、会話の引き出しも多い。
和輝は『蘭のことで相談がある』と美奈を呼び出し、酔わせた上で自宅に連れ込み、最初は強引に犯されたのだという。
『こんなことをして、ごめん。蘭なんかより、君の方がずっと綺麗だったから』
『親同士の関係で、しかたなく見合いをしたけれど、僕は君に恋をしてしまった』
『君さえいれば、なにもいらない。好きだよ』
ベッドの中での甘い囁きから、彼がどんなふうに美奈を抱くのかという赤裸々な話まで、メイは全部知っている。
美奈が、どこか得意げに話して聞かせてくれたからだ。
結局、その関係も彼の失踪と共に消滅した。
そんな調子で、女関係にだらしのない男であることは、友人の間では有名だったらしい。
だから、行方不明になった当初も、どうせ何処かの女と駆け落ちでもしたのだろう、とたいした騒ぎにはならなかった。
……あんなことをしておきながら『蘭がかわいそうだ』と泣くのね。
いかにも、友達想いだという顔をして。
その神経が、メイには信じられなかった。