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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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一筋の光-2

「だから臓器は渡せないよって。」
「……。」

適合者が見つかった、と言う吉報だが戸惑いを隠せない情報。彼に連れられ、たまたま受付にいた坂本サンと言う方に声を掛け、公園へ。

「でも、それがないと僕は、命を。」
「そんな事は解ってる!よしてくれないか…そんな言い草、それじゃーまるで私が君を見殺しにしているみたいじゃないか。」

きいっ、きいっ、きぃっ…金属の擦れあう規則正しい音。錆びた鉄のブランコが揺れる音

50代半ばのメガネをかけた中年男性。その顔に笑みは一切なく不愛想で、顔もどこか生気を吸い取られたようにやつれている、その訳は。

「真理子サンの死はお悔やみ申し上げます…。」
「あぁ、お線香あげてくれたんだってな、そのつどはどーも。」

今から半年前、彼の娘、坂本真理子サンと言う方が交通事故で22歳と言う若さでその生涯を終えた。一時期この病院で生死を彷徨い一命を取り留めそうにもなったが、今から一週間前、残念ながら息を引き取った。

そんな坂本親子と絆の接点と言うのは、実は真理子サン生前にドナー登録をしていた、元々看護師を目指していて優しい性格だった彼女は一人でも心臓病で苦しむ人を救ってあげたいと、自分の身を差し出し登録に至った。

絆と彼は、お互いの担当医から紹介され、亡くなった彼女の臓器が、絆の持病を治す二つとない治療薬と知り、案の定彼とその家族がその臓器を譲って下さいと、力強く頼み込んだものの、何故か却下された。

「前にも言ったが、君にとっての治療薬は私とっても手放せない大切な物だ。」
「坂本サン…。」

彼は奥さんと離婚し、それからずっと一緒に暮し支えてくれた娘だけが、何よりの宝物だった、故に娘に依存気味の彼は、遺骨だけでなく臓器までも自分の傍に置いておきたいらしく…。

死亡の手続き等で、今回足を運んだらしく、もし受付に居なくても電話で呼び出して話をするつもりだった、病室で顔合わせをした時に電話番号を交換したらしく。

必死に頼み込む絆に、彼は応じる様子はまるでない坂本サン、折角生きるチャンスが芽生えたのに、これをみすみす逃す何て…。

…何か、理不尽。私は前に一歩踏み出しひと肌脱ぐ事に。

「貴方、本当に娘サンの事を愛してるの?」
「何?」
「杏?」

二人の会話に横槍を入れる私、絆は突然の口出しに目を丸くし、坂本サンはバツ悪そうに苦い顔をこちらに向ける。

「そうやって臓器何かを、いつまでも大事そうに守り続けて、それが正解だとでも思ってるの?」
「何だね君は。」
「彼の恋人よっ!…娘サンは人の役に立ちたくてドナー登録をした。それなのに自分が突然亡くなってその臓器が病で苦しんでる人の役に立とうとしてるのに、それを頑なに断る…何て、自分のバカげた行動が、天国の娘サンを如何に泣かせてるか、貴方には判らない訳!?」

気持ちは判らないでもない、でも娘さんの意志、それに目の前で困ってる人がいるのに…そう思うと信じられない気持ちで一杯だ、故に偉そうな口調で大人を罵った事への罪悪感もまるでない、坂本さんは顔をこわばらせ。

「君に何が解るのかねっ!生意気な!恋人を助けたいからって怒鳴らないでくれっ!」
「っ!私は正論を言ったまでです!いつまでそんな臆病で居るんですか!?」

私の容赦ない言葉に、顔を赤く染める。

「…悪いが臓器は渡せん、皆が皆そう親切に身内の大切な臓器を提供する訳じゃない。」
「っ!」
「臓器は私とって大切な物、それを他人の手に渡る何て、自分と全く無関係の人物を助けてあげようと考えつく程私はお人好しではない。」

こんな事って、私は冷血な彼に、頭に血が昇り、突っかかろうとすると。

「やめてっ杏!」

肩を掴まれ、怒り狂う私を制止し。

「何でよ!コイツはアンタの命を救う薬をくれないって言うんだよ?可笑しいでしょ!」
「相手にだって事情はあるんだ、別に必ず提供しなきゃいけないって訳じゃない、そんな乱暴に取り上げるもんじゃない。」
「っ……。」
「……まぁそういう事だ、申し訳ないけど。」

軽く服を整え、私たちに背中を見せ「無事に適合者が見つかる事を祈るよ」と根も葉もない捨て台詞を言い放ち、去って行った。







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