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サイパン
【戦争 その他小説】

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第十話 分隊長たちの夜-1

「おーい。杉野はいるかー?」
 海軍の陣地構築を手伝った夜、部屋で分隊員たちと雑談に興じていた杉野に廊下から呼び声がかかる。
「杉野です」
 戸を引いた先には、西山軍曹、飯田軍曹、酒田伍長の三人が立っていた。
「おう、杉野。たまには分隊長同士、飲み交わそうや」
 そう言って西山は右手の一升瓶を軽く掲げた。もちろん、中には酒がたっぷりと入っている。
「久しぶりですね。わかりました。酒保で飲むんですか?」
「おお。無論、そのつもりだ」
 杉野の質問に飯田が頷いて答える。
 酒保とは、いわば食堂のことだ。酒やアンパンといった嗜好品のほか、手拭いや石鹸、歯磨き粉といった生活必需品まで扱っていた。さすがに前線に近いサイパンの酒保は、本土のものよりも品ぞろえが豊富ではなかったが、それでも酒保は普段食べれないものが食えるため、それなりに賑わっていた。


 酒保に来た杉野ら四人は適当な座席を見つけて腰を掛けた。
「じゃあ自分らが湯呑み取ってきます」
 西山と飯田より階級が下の杉野と酒田が立ち上がって湯呑みを取りに行く。西山と飯田は同時に軽く相槌を打ってから姿勢を崩して座りなおした。
「さぁ、開けるぞーぅ」
 二人が四人分の湯呑みを取ってくると、西山が気分よさげに一升瓶の栓を開ける。そして、四人の湯呑みへトクトクと酒を注いでゆく。


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