作-1
「落ち着いた?」
泣いてこそいないけど、俺に抱きついている時に
ギュッと俺の背中のシャツを握り締めていたのだから
何かあったんだろう。
部屋に入れて、熱いコーヒーを入れたら
少し落ち着いたらしい。
「どうした?今日のデートで何かあったか?」
聞きたいような、聞きたくないようなそんな気持ちで
井上の返事を待った。
「エジプト展に行って。お昼を食べたの」
「うん」
「その後、計画通り動物園に行って」
「え。マジで行ったの?」
俺のその声に井上はキッと睨んだ。
「あ。ごめん。続けて」
「まぁ久しぶりに動物園に行って、楽しかったの」
「うん」
「橋本さんが久しぶりに楽しかったから
夕飯をおごるよって話になって」
「うん」
ここから先は聞きたくない・・・な。
「2人とも少しお酒を飲んだの」
「あぁ」
「でもさ。話しが続かなくて。
もう用意して行った話題は全部話しちゃって」
「なるほど」
「お店を出たところで、私、橋本さんにキスしたんだよね」