作-5
「キスして」
私は、じっと睨んだまま山崎にそう言った。
「は?」
「昨日の山崎とのキス。ドキドキしたの。
もっとしていたいと思った。
今日の橋本さんとのデートなんかキャンセルしても良いから
山崎とキスしたいと思ったの」
「・・・・」
「それでも、大人だから?25歳だから?
橋本さんとデートに行ったよ。文句ある?」
「・・・・」
今日の午後からずっと思っていて。
そして自分で自分の心に否定しても否定しきれない気持ちをぶつけた。
「キスしたよ。山崎の時みたいにドキドキするか確かめるために!」
「・・・・」
「でもドキドキしなかった!」
「山崎のキスが忘れられな―――・・・」
私が最後まで言う前に
山崎がキスをしてきた。
頭の後ろをがっちり持たれて
離さないとでも言うようにキスをむさぼった。
角度を変えて
舌をからませ、お互いにお互いを抱きしめ合う。
この部屋には2人しかいないのだけど、
あたかもこの「世界中」に・・・
2人しかいないような感覚になった。