作-3
「何も感じなかったの」
「はぁ?」
俺はかぼちゃの煮つけをポロリと箸から落とした。
「キスをしたの。橋本さんと」
「うん」
「何も感じなかったの」
「・・・・」
「気持ちいいとか、もっとしたいとか・・・・」
「・・・・・」
「何も感じなかったの」
はっっ!
「ばかばかしい」
俺はもう一度かぼちゃをつまむと口の中にほおりこんだ。
「お前ね?キスって魔法だと思ってるんじゃないだろうな?」
「・・・・」
「好きでもない相手とキスしたら、恋が芽生えるとか
バカなこと考えてないよな?
お前、25歳だよな?ただの5歳じゃないよな?」
「・・・・」
「今時、5歳の俺の姪っ子でもキスは好きな人とするもんだって知ってるわ!」
「・・・・」
ばかばかしい・・・・
「橋本さんを好きな訳?違うんだろ?
橋本さんは『条件』が合うだけだろ?
お前が勝手に決めた『結婚相手の好条件』にな!」
「そんな冷たく言わなくたっていいじゃない」
「だって、その通りだろ?」
「キスでドキドキしたいなら好きになるしかないな。
それともドキドキは諦めるか?」
小馬鹿にした言い方でビールを飲み干した。