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衛星和誌 −Qカップ姉妹−
【SF 官能小説】

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零之叙 〜ミ・ドリ語り〜-1

 この書を記すにあたり、わたしは悩んだ。
 というのも、わたしは書を記すことに慣れてはいない。そもそも、高等教育をろくに受けていないからだ。
 しかし、ルリアさまからの命とあれば致し方ないと、この大役を引き受けたのだ。
 わたしからすれば、ルリアさまのほうがよほど適任だと思ったのだが、曰く、
「わたしは、今回の事案の直接の当事者かつ一方の、事実上指導者のひとりだ。公平性に欠ける」
とのこと。
 かえすがえすも、高潔なお方だ。
 あの素晴らしく豊かな胸には、勇敢さや義侠心だけでなく、優しさ、そしてこのようなフェア精神も、いっぱいに詰まっている。お仕えしてよかったと、心底思う。
 わたしとて当事者では充分にあるのだが、たしかにおっしゃられるとおり、指導者であるルリアさまが直接筆を執るよりは、多くの人々の心情に沿うかもしれない。
「今回の事情に精通し、かつ指導者クラスでないとすると、ドリー、おまえが適任なのだ」
 そうおっしゃって、あの、優しく深い瞳で、わたしを諭された‥‥。互いの胸がくっつく――いや、触れ合う――そ、そう、触れ合うほどの距離で‥‥。
「ならば、歳ゆかぬわたしでなくても、ジャニスさまでもいいのでは――。あの方も軍属ではないわけですし‥‥」
という言葉は、喉の奥から出てこなかった。
 「ドリー」。
 昔はいやだったが、ルリアさまにも呼ばれるようになり、むしろ好きになったわたしの愛称だ。
 わたしの本当の名は、ミ・ドリ。
 オイオの戦士にして、この書の執筆者だ。
 本書は、わがオイオが、スガーニーの野望といかに闘ったかを、記すものである。

 両国間の関係、また紛争までの詳しい推移は別書に譲るとして、本書は、召還したあの調教士のことから記そうと思う。
 あの男が功労者であることは、ルリアさまのみならず、他の関係者も皆、認めるところである。わたしにとっては面映ゆいところだが――。う、なんだ‥‥、この胸の奥の疼きは――‥‥。
 本書の題は『衛星群和誌』としようと思う。『−和記』『−間和誌(和記)』という題も考えたが、オイオ星、そしてスガーニー星、そしてまた他の幾多の星々‥‥。平等に母星をめぐるわれら大小の衛星群を襲った此度こたびの事案――和平へのプロセスの記録として、ふさわしいのではないかと思う。


一〇三九〇年八月吉日
ミ・ドリ・ハイディ・オリョーフ


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