爛熟女子寮(5)-3
ペットボトルのお茶を持ってきたことを思い出してバッグから取り出すとぬるくなって泡立っている。生ぬるかったけど喉が渇いていたので体が落ち着いた。
「あたし、持ってこなかった」
「よかったら飲んで」
「ありがとう。こんなに歩くんだったら買ってくればよかった」
絵理は私より汗をかいている。首筋の汗が一滴、胸元に流れた。
陽は強いものの、じっとしていれば風も涼しくて心地よい陽気である。
絵理のむっちりした脚が草の上に生々しく伸びている。夢の映像が脳裏をよぎった。
「須田さんの脚、ほんとにきれい」
ふざけた仕草で太ももを突いた。
「柔らかい。色白だし」
「触っていいよ」
絵理は笑わずに言った。私をじっと見ている。私がためらっていると、
「触って……」
私に脚をくっつけてきた。
閉じた内股に手を置くと脚が少し開いた。汗ばんでいるけどもちもちしている。
「べとべとでしょ?」
「柔らかくて、気持ちいい」
感触を確かめるように肉を軽くつまみ、私の手は這うように奥に進んだ。
手首までスカートに隠れたところで止めた。あとわずかで下着に届く。
絵理は両手を後ろについて、さらに股を広げた。
(触ってほしいのね……アソコに……)
受け入れてくれている気持ちがわかって安心した。
指先を股関節の寸前まで伸ばして留まり、辺りをゆっくり撫でた。性感帯が緻密に張り巡らされた一帯である。停滞したのは意図してのことだ。鋭敏な部分にすぐ触れず、直前で蠢く指。何とももどかしい距離感が心底からの昂奮を生むだろう。
「下條さん、やさしかったでしょう?」
手の動きをさらにゆっくりする。
「うん……でも……」
言葉を切って、
「あたし、好きじゃないの。あの人も、白幡さんも……」
「何かあったの?」
「何もなかったけど……したくないの……」
「変なこと、された?」
ディルドのことが浮かんだ。
「されなかったけど……」
「器具でしょ?」
「知ってるの?」
「そういうのがあるのは杉本さんから聞いてたわ」
「そうなの。でも、断ったわ……」
絵理の目元が薄紅色に染まってきた。
「いやだった……」
「私は見たことないけど、抵抗あるよね、そういうのって。ディルドっていうんでしょ」
「そう。いきなり見せられて、入れてみない?って」
「それで?」
「いやですって言ったら、それ以上言わなかった。じゃあ、ローション塗ってって」
そして美和子は全裸になったという。彼女の熟した肉体が思い出された。
「それで塗ってあげたんだ」
「うん……」
その後のことは経験したから想像がつく。塗りながら徐々に昂奮していったのだろう。
私は絵理と美和子が絡み合っていく姿を思い描いて胸を熱くした。
ところが絵理は意外なことを言った。
「少しして、あたしにも裸になればって言うから、断った」
私は手の動きを止めた。
「下條さん、何て言った?」
「笑ってた」
美和子は当然誘いに乗ると思っていただろう。
「それから?」
裸はお互いをよく知るためだとか、お風呂で一緒だったんだから恥ずかしくないとか、宥めすかしたという。
「それでも断ったわ。お風呂は仕方ないけど、他ではいや。裸になるのは好きな人の前だけですって言った」
「ほんと?」
思わず内股の手を引っ込めると絵理に押さえられた。
「いいの。続けて。佐伯さんは好きな人よ」
そう言って私の肩に手をかけてきた。
「けっこうはっきり言うのね」
「生理的な問題だと思うの。触れたい人と厭な人。理屈じゃないの。あの人たちはだめなの。あなたは好きよ、初めから」
絵理は下半身をむずむずと動かした。
私は何て答えていいかわからずに曖昧な笑顔を見せていた。
「下條さんとは何もなくて、ローション塗ってただけ?」
「うん。それも少しだけ。すぐに帰っていいって言われた。白幡さんにも言っておくからって。だけど、帰る時、脚だけ見せてくれない?って言われて……」
立ったままジャージを下げて見せた。
「下條さんは?」
「きれいな脚ねって……太ももにキスされた……」
「そう……」
美和子は絵理の肉感に欲情していたにちがいない。
「それにしては戻ってくるの遅かったでしょ?ドアの音、聴こえたから」
「ロビーにいたの。何だか気が抜けちゃって……」
「そうだったの……」
私は太ももをやさしく揉み込んだ。
(自分がそばにいれば慰めてあげられたのに……)
その時はサリーと……。
「あたしね、まだバージンなの」
「そう……」
「杉本さんには経験あるって嘘ついちゃった。聞いた?」
「知らないわ。聞いてない」
そう言ったほうがいいと思った。
「佐伯さん、経験あるんでしょう?」
「……うん……」
「あたし、まだなんだ……」
「早ければいいってことでもないわ」
「そうかな。……いろいろ教えてね」
どういう意味なのか、真意は計りかねたが私は気持ちが楽になった。別に私のために下條さんとの接触を拒否したわけではないだろうが、打ち明けられて頼られたことで身も心も捧げられたような満足感を覚えたのだった。