爛熟女子寮(4)-1
部屋の前に来て玲奈のことを思い出した。すっかり忘れていた。
(帰ったかな……)
そっとドアを開ける。ベッドに寝ていた。
「ごめんね」
近寄ってみると寝息を立てていた。ブルーのジャージ姿を見ていると部活の合宿に来ているみたい。
口の端にクッキーの滓が付いている。
(なんて可愛いの……)
私は膝をついて寝顔に見入ってしまった。
(顔はとても幼いのに……)
動悸がふいに高鳴ってきたのは、お風呂場で彼女が美和子にしがみついた時の恍惚とした表情を思い出したからだった。
(この子だって女なんだわ。私と同い年だもの……)
オナニーだってしているかもしれない。
(どんな顔でするのかしら……)
そっと唇にキスした。玲奈の目が白雪姫みたいに開いて、私は慌てて笑顔を作った。
「遅くなっちゃったわ。ごめん」
「寝ちゃった。すいません」
「いいのよ。私が遅くなったんだから」
「下條さん、どうだった?何か怒られたの?」
「ううん、ちがうの。いろいろ決まりとか、これからの生活のこと。ほら、私、ホルンだから」
「そうか。同じパートだもんね」
玲奈は力なく微笑んだ。
「今頃悪いけど、何か話があったんでしょう?」
「うん。……話ってほどでもないんだけど……」
「なあに?」
「もう時間も遅いし、また今度でもいい」
歯切れが悪いのと浮かない表情なので私は真剣に向き合った。
「何か悩みだったら、抱えないほうがいいわ。話して」
頷いた玲奈だったけど、話し始めるまで少し時間がかかった。
玲奈は不安そうな目を見せてから、風呂場で体験した気持ちを口にした。
「あたしって、レズなのかな……」
美和子の体を触っているうちに何だか頭がぼうっとなってきて、体の奥のほうから熱くなってきた。
「相手は女の人なのに……」
「それって、どんな感じ?」
「どんなって、わからない」
玲奈は口ごもって曖昧な言い方しかしない。美和子がレズだと聞いて怖がっていたのに、自分が感じてしまった。それが言いだせないでいるようだった。私はそんな彼女に愛しさを覚えて横に寄り添って座った。
「レズなんかじゃないわ」
「え?」
「三田さん、あなたは正常よ」
「そうかな……」
「そうよ。だって私もそうだったんだもん」
「ほんと?」
「ほんとよ。杉本さんも須田さんだってそうよ。見ててわからなかった?」
「気がつかなかった。そうだったの?」
誘導したつもりはなかったけど、玲奈は『よくわからない気持ち』を白状したようなものだった。
「感じちゃったんでしょう?」
「え?……」
とたんに耳を赤く染めた。
「みんな同じだったのよ。感じたの」
そして項に口づけた。
「あ……」
反射的に身を竦めた彼女を優しく、しかし、しっかりと抱き寄せて、
「肌が触れ合うって、誰でも気持ちがいいものよ。そう思ったでしょう?おかしなことじゃないわ」
私が積極的に行動したのは美和子との残り火がくすぶっていたからでもあるけど、それだけではない。
(この子に最初に触れたい……)
突然そんな想いが強く起こったのだった。
私は男ではないから『処女』ということに観念的な執着はない。だが、おそらく性体験のない純真無垢な玲奈の肉体に偏執的ともいえる興味を覚えて昂奮したのである。
いずれ美和子か由希が彼女を『抱く』にちがいない。
(その前に、私が……)
征服欲というのか、とにかく可愛いから私の手で……奇妙な感情だった。
私はジャージの上を脱いで上半身下着姿になった。
「裸って、気持ちがいいのよ」
さらに下も脱ぎ、
「あなたも脱いじゃいなさいよ」
言いながらブラも外して乳房をあらわにしてみせた。
突然のことなのに玲奈は意外なほど驚きを見せなかった。むしろ顔を上気させて、瞳には好奇の輝きすら表われていた。お風呂場での昂奮が甦ってきたのかもしれない。
「あたし、ペチャパイだから……」
「関係ないわ。女って、赤ちゃん産むとみんなオッパイ大きくなるんだって。私のママもそうだったって」
説得の必要はなかった。私の言葉が終らないうちに玲奈はジャージを脱ぎ始めていた。
(あら、ノーブラ……)
つくづく可愛いオッパイだと思う。
(可愛いわ……)
それを口に出すことはしなかった。言えば彼女にとっては小さいと言われることと同じになる。
乳首も小さくて大豆くらいの突起だけど、乳輪は私より大きい。
全裸になるのは玲奈のほうが早かった。胸もデルタも隠さない。二人きりだからか、もうお風呂で慣れたからなのか、いずれにしても心を許してくれたようで嬉しかった。
玲奈をベッドに寝かせて横臥するつもりが引き寄せられるように上になっていった。
「ああ……」
声を洩らしたのは玲奈。
体重をかけないように跨いで膝をつく。ちょうど乳房と乳房が軽く触れる。
「どう?気持ちいいでしょう?」
「うん。佐伯さん、柔らかい」
怜奈が私の首に腕を絡めてきた。胸が密着する。
「いいわ、とてもいい」
上体を擦りつけて息を弾ませる。擦れ合った乳首から生まれた快感は瞬時に秘泉の潤いに繋がった。
(玲奈もそうなっているのだろうか)
彼女の乱れた息が首筋や頬に吹きかかる。少し開いた口を見ていたらキスしたくなって、思わず唇を重ねた。
「う……」
身動きを止めた玲奈。予想していなかったのだろう。目を大きく開けていた。
歯は閉じられ、鼻から熱い息が洩れてくる。クッキーの匂いがした。
口を離すと唾液が糸をひいた。
「佐伯さん、レズじゃないのよね」
「ちがうわ、ちがうのよ」
「あたしもちがうわ」
「ちがう、ちがうわ」
玲奈は目がうつろになっていた。私はすかさず可憐な乳首を口に含んだ。