大-1
山崎がその時何を思っていたのか知らない。
私は何も考えられなくて。
何回も離れてはキスをしての繰り返しに
感覚がボーっとなった。
どれぐらい長い間キスを繰り返していたのか。
テレビもついていない部屋で
私たちのキスの音だけが静かに響いていた。
キスが終わると山崎は自分の胸に私の頭を掻き抱いて
優しく髪を撫でていた。
「美咲・・・」
小さく小さく言ったその声は、絞り出すようでかすれていた。
「時間・・・終電だ」
「・・・・ん」
ゆっくりと2人の身体を無理やり引きはがして
私の目を見た。
そして、山崎は両手で私のほほをさすり
そのまま顔を上向かせ
私にもう一度触れるだけのキスをした。
「ごめ」
「ううん」
お互いにそれだけ言うのがやっとで。
その後は無言で靴を履いて
最寄駅まで微妙な距離感のまま無言で歩いた。
「あれ?山崎くん?」
そんな私たちの距離を遮るように
女性の声がして、二人でそっちを振り向くと
小柄な可愛い女性がコンビニの袋を持って立っていた。