明星ロマン-13
3
夜明けまであとどれくらい時間が残っているだろう。
室井は群青色の星空を想像しながら、夢とも現実ともつかない感触を味わっていた。二人はベッドの上で繋がっていた。
「志織……、すてきだよ……、志織……」
行きずりの女と肌を重ねる室井。
「おねがい……、もっと……」
譫言(うわごと)を挟み、より深く繋がろうとする久野志織の肉体が、男性器を根元まで飲み込んで恍惚に染まる。
粘り気のある音をたて、姿形の違う二つの性具が交わり、歪んで、戯れた。
これほどはげしいセックスに及んでいるというのに、ベッドが軋むことはほとんどなかった。
室井は、シックスナインについて彼女にたずねてみた。
「してもいいよ……」
汗か涙かわからないものを目に溜めて、彼女はクンニリングスを受けとめた。
室井の舌が陰唇を往復するたびに、彼女の両手がしがみついてくる。
それに愛液の量が明らかに多い。
下り物の匂いも気にならないくらい、室井は行為に酔っていた。舐めたものをためらわずに飲み込んだ。
「志織の味がする」
「あたしの?」
「うん、甘い蜜の味だ」
「そんなわけないじゃん」
今度は室井が責められた。ペニスが彼女の口の中を巡っている。
これは歯茎か、いや上顎だ、それに舌、頬の裏もわかる──めまぐるしい興奮の中で、室井は彼女の奉仕を堪能した。
久野志織が何者なのかということは、できるだけ考えないでおこうと思った。
ベッドは十分に温まっている。不安があるとすれば妊娠のことだが、一度は避妊具なしで交わった体である。
コンドームの匂いが嫌いなのだと彼女は言った。
「だから、室井さんの好きなようにして」
「そうさせてもらうよ」
お互いに獣の姿勢をとって、室井は彼女のことを背後から貫いた。まるで無理やり犯しているような気分だった。
尻を支えながらひたすら男根を送り込み、彼女の声が上り詰めていくとわかると、わざと動きを止めて焦らした。
そんなふうに神経を撫でられた女体がどう変化するのか、その瞬間を拝むために室井は腰を振る。
子宮のありかを亀頭でうかがうこともした。とうとう穴の全部を知り尽くしたのだ。
「もうだめかも……」
と久野志織が弱音を吐く。
「ううん、いく……」
涙声で絶え間なくあえぐ。密かに押し殺していた欲求が満たされたことで、ようやく彼女の素顔があらわれたのだろう。
「いっちゃう、ああいくう……」
伸びきった背中がさらに反り返り、息んだ声が途切れると、彼女はそのままベッドに倒れ込んだ。
絶頂──室井はそう直感した。久野志織の手足がひくひくと痙攣するのを見て、それを確信する。
結合した部分が熱を孕(はら)み、むくむくと収縮を繰り返していた。
愛液の滴ったシーツがところどころ変色している。
彼女はまだ動かない。いや、オーガズムの余韻に浸ったまま動けないでいる。
だが室井のほうはまだセックスの途中なのだ。