乙-5
「それで、橋本さんかよ?」
無表情になった山崎がしつこく聞いてきた。
「いけない?」
「あぁ、ネガティブすぎるね」
「そんなの私の勝手じゃない!」
そんな私たちの言い争いに永田君が
「まぁまぁ・・」と、とりなしてきた。
「井上は橋本さんと結婚したい訳?」
核心をついて来るね!永田君!
「出来れば」
「お前なぁ。そんな理由で結婚しても続かねぇぞ」
「うっさいな!山崎は黙っててよ!」
「お〜!これがうちの受付嬢の本性です」
うっさい。
山崎うるさい!
「あんたは顔も良いし、経営管理部だし、エリート街道まっしぐらじゃないの。
適当に年下の可愛い女の子でもさっさと捕まえて
社内結婚すればいいじゃん。
私の事はほっといてよ!」
はっきりきっぱり言った私の勢いに押されたのか
山崎はそれ以上は何も言わなくなった。
「ね?橋本さんは彼女がいるのかな?」
私と永田君のそんな会話の横で、小さく
「ほっとけねぇんだよ」
と山崎が言ったのは
私の耳には届かなかった。