乙-4
「地味って・・・・」
「地味すぎるだろ!あの人は!」
「い・・いいじゃん」
大きなお世話!
「あの人、32なのに、主任試験の話しが全くないんだぜ?」
うん。知ってる。
「地味な経理でもピカイチ地味だ」
うん。知ってる。
「仕事が出来るわけでもない。出世の見込みは薄い。顔だってフツーだ」
うん。知ってる。
「部下の面倒見がいいことだけが取り柄だけど、それだって暇だからだ」
う・・・ん。
永田くん、先輩の事ひどい。
「で?受付嬢のカワイコちゃん井上は橋本さんのどこが気に入った訳?」
山崎だってそんな風に意地悪に言わなくてもいいじゃない。
私の恋なんだから。
「地味だから!よ。
モテなくて結構!浮気の心配がないわ。
出世しなくて結構!経理なんて堅実そうじゃない」
私のセリフを聞いて山崎がポカンとした。
「おま・・ネガティブ女だなぁ〜」
失礼な!
「ネガティブって言うけどね!私は今までの彼でさんざん浮気に泣かされてきたの!
お金にだらしない男も多かったの!
モテる男とか、カッコいい男って私にとっては全然褒め言葉じゃないから!」
「・・・・」
「堅実な生活をして、私だけを愛してくれる人と結婚したいのがいけない?」
周りが酔っていて、うるさくて
私たち3人の会話を聞いていないことは救いだった。