『特別』車両、再び-7
「それは違う…」
その星司のつぶやきは、テンションの上がった女達に遮られた。
「そうなのよ。女はみんな使いたいのよ」
「で、どんな感じだったの?」
鼻息の荒くなった2人に、身を乗り出して迫られた優子はたじろいだが、答えない訳にはいかない雰囲気だった。
「は、初めは凄く痛かったの。だっておっぱい捻られてばっかだったし」
「可哀想に…、そ、それで…、気持ち良くなったの?」
「ゴキュリ…」
陽子が続きを急かし、由香里が生唾を飲み込んだ。
「ううん、最後まで痛いままで、全然よく無かったの」
少しだけ嘘をついた。
「えっ、そうなの〜」
2人はガッカリした。しかし疑問が残る。
「でもそれならどうして持って来たのよ」
「え〜っと、乳首が痛く無い時に使ったら、気持ちいいんだろうなあって…」
優子の告白を聞いた2人の女は顔を見合わせた。
「エッロ〜〜〜、なんてエロい子なのこの子は!」
声を重ねた2人は、妹のような存在の優子の卑猥さに呆れ返りつつも喜んだ。
「あっ、だから返して下さい。それ、あたしのだから」
開き直った優子は、身を乗り出して陽子から乳首クリップを奪い返そうとした。しかしテンションの上がった陽子がそれを許す訳は無かった。
「きゃあ、誰が返すもんですか、これはあたしが貰うんだからね」
「ダメよ、そんなエッチな物は先生が没収します」
結局、後部座席でキャアキャアと嬌声を上げながら、3人の女がもつれ合った。
運転席では手島がニヤニヤ笑い、助手席では星司が頭痛の時のように、目頭を押さえながら頭を振っていた。
「やあん、どこ触ってるのよ」
「ああん、パンツ脱がさないで」
「乳首捻らないで!あっ、そ、そこに指はダメえ、ああん」
どんどんエスカレートする女達に、業を煮やした星司は後ろに向かって怒鳴った。
「いい加減にしろ!運転中にそんなに暴れたら危険だろ!それに優子ちゃんは疲れてるんだから直ぐにやめろ!」
「ひっ…」
普段は丁寧な言葉遣いの星司の怒鳴り声に、優子と由香里は星司の声に直ぐに反応して暴れるのを止めた。しかし姉の陽子は、その程度では止まらない。
「誰が疲れてるってのよ。この子ったら元気一杯じゃないの」
陽子は親指でクイッと優子を指して言った。
「確かに」
運転席の手島が面白そうに答えた。手島の応援に勇気づけられた陽子は畳みかけた。
「仮に疲れたいたとしても、このエロ娘はイケばイクほど、元気一杯になるんだからね!マスターも『見てた』から知ってるでしょ!このエロ娘を元気にしたかったらイカせばいいのよ!」
陽子は『個』と『公』をわきまえて、その場によって星司の呼称を使い分けていた。今は【痴漢専用車両】のメンバーが複数集う『公』の場なので、『マスター』の呼称を使った。それを聞いた優子は、自分に対する酷い言われように憤慨しつつも、その陽子に感心した。