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僕をソノ気にさせる
【教師 官能小説】

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僕をソノ気にさせる-6

 小学五年生になると、ますます優也は話さず、更には笑顔も少なくなっていた。しばしば体調不良を訴えて学校を休み始め、夏休みには一人でずっと家にいた。そして明けた学期初日には学校に行かないと言い出す。数日は怠けていると思い強い言葉で叱った祖母だったが、毎朝青ざめた顔で体調不良を訴えるので心配になって病院に見せた。いくつかの病院を回った後、小児心療を薦められ、カウンセリングを終えた相談師から学校でイジメに遭っていることを知らされた。長男からは常々「おふくろは優を甘やかしすぎる」と苦言を言われていたから、どうしても旧い考え方にとらわれがちな祖母は、最初優也がワガママになってしまったがために同級生に疎んじられたのではないかと自分の子育てぶりを責めた。だが、カウンセラー立会いのもと優也の話を聞き、また学校にも相談して事情を明らかにしていくと、イジメているの連中の理由は、優也の性格によるものではないということがわかってきた。
 小学生にもなると優也の外見が他の子供たちと違うということを認識してくる。優也の肌の色は父親譲りだったが、顔立ちは母親から譲り受けたところが多分にあった。「久我山くんは何故ガイジンぽいのか?」という疑問に心なく、不適当に答えた大人がいたのだろう、優也の母親がホステスであり、しかも優也を捨てたという話は子供たちの間に一気に広まった。しかも父親参観の日、祖母に「ちゃんと帰ってきて出てやりなさい」と言われた父親が、時間が無いため現場から直接夜行バスで帰ってきて、作業着のまま教室に現れた姿は、スーツやジャケットで身奇麗にして参加している他の父親に比べるとかなり年長であったこともあり、一際みすぼらしく見えた。参観日に出ていて優也の父親を見た父兄が、家に帰ってからその家庭事情が我が子に悪影響を及ぼしてはいけないと、「あの子とは仲良くするな」と言ったために優也の周囲から友達が一人減り、二人減りし始めた。
 やがて優也の周囲を全員が去ると、今度はガイジン、ガイジンとからかい始める。くだらない中傷は無視するという心の強さは、まだ子供の優也は持ち合わせていなかった。教師の目の届くところではコソコソと、目の届かないところでは露骨に繰り返される攻撃は、叱って止める大人が誰もいなければどんどんエスカレートしていき、遂に優也は学校に行く時間になると激しい吐気と眩暈を催すようになった。
 学校に訴えても心からこの状況を何とかしようとしてくれる教師はいなかった。PTAにも付議したが、自分の子供も何らかイジメに加担しているかもしれないと恐れた父母たちも、率先してこの問題の解決に当たろうとする者はいなかった。夫が教育者であったことで学校という場所に尊敬と信頼を抱いていた祖母は大いに失望していたが、周囲を取り巻く大人たちの無尽力を知るに至って優也の命の危険まで感じ、もはや学校には行かせないことに決めた。
 決して物憶えが悪い子ではなかったが、毎日家にいて勉強をしない優也を見ていると、学力の遅れが心配になる。市販の問題集を買ってやらせても、好きな所、できる所しかやらない。教えてやろうにも祖母にとっては学生時代は遥か昔、かつ現在のカリキュラムがわからないから適わず、学校と同等の教育を与えられないままに月日が流れていった。
「やっぱり一度そういう施設に預けたほうがいいよ」
 父親の年忌で家に親族が集まったとき、長男が優也をケアハウスに入れるように諭してきた。
「何言ってるんだい。母親もいなくなって、父親も一緒に住めないあの子を一人ぼっちでそんな所へ入れるつもりかい? カウンセラーの先生のところにだって毎週連れて行っているんだ。この家を出て行かせやしないよ」
「いや、もう三年近くにもなるじゃないか。このままだとずっと学校にいけなくなるぜ? こんな日に言うのも何だけどさ、おふくろが逝っちまったら、優はどうするんだ」
「私は優也が一人前になるまで生き続けるよ」
「無茶言うなよ、自分でどうにかなるもんでもないだろ」
 法要が終わり全員で食事をしたあと、優也は先に風呂に入って、もう寝ていた。優也がいなくなったのを見計らって、伯父はビールを飲みながら母親に切り出したのだった。
「そうだぜ、婆ちゃん。優ももう中学だろ。小学校と違って中学での勉強は一気に難しくなるんだからさぁ。一日も行かないままにするつもりかよ?」
 隣から伯父の長男、優也の従兄にあたる智樹が賛同する。
「仕方ないじゃないか。中学の入学式の日にあの子は学生服を着て、家を出て角を曲がるところで吐いたんだからね。勉強は……、あの子はたくさん本を読んでるから大丈夫だよ」
 優也は学校に行かなくなってから特に何がしたいわけでもなく、押し黙って時間を過ごしていた。テレビを見たりインターネットをしたりしていることもあったが、テレビ番組の中では、芸人が生得の資質をからかわれて笑いを取るシーンがあった。もちろん笑いを浴びる彼は、それを承知了解の上でネタにしているわけだが、そこまで深慮できない優也には見ていて辛い。インターネットともなると、現実以上に見るに耐えない罵詈雑言が溢れている。


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