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僕をソノ気にさせる
【教師 官能小説】

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僕をソノ気にさせる-47

 顔を上げた。優也の瞳が寒々しい。そんな目を向けられる辛さに耐えられる筈もなく、涙が頬を伝って落ちてしまった。
「先生、どうして言ってくれなかったの? 別に好きじゃなかったんだ?」
「だって」
 言葉を繋ごうとしたが、慌てて下唇を噛んだ。大声で泣き叫んでしまいそうだからだ。「……。……優くんが、……生まれてくるのが、遅いから……」
 瞼を閉じたらそのまま悲声に暮れてしまいそうだったので、懸命に瞳を開けて優也を見つめていた。
 そんなのは僕のせいじゃない。杏奈の悲嘆を見ていると、哀しみや憎しみでは片付けられない、引き裂きたいほどの遣る瀬なさに優也は杏奈の背中を両手で抱きかかえて立たせた。これまでは杏奈を気遣って恐る恐る力を入れていたのに、今は衝動のままに細身を強く抱きしめて後ろへと押し出していく。
「優くん……」
 杏奈は優也の肩につかまり、強い抵抗無く、導かれるままに後ずさっていった。ふくらはぎにへりが当たって、悲鳴なくベッドへ倒れこむ。優也が馬乗りになって杏奈の両肩を掴んで顔を近づけてきた。顔を背けても、そのまま熱い息が耳元へ押し付けられた。
「ん……」
 短い声を漏らす杏奈へ優也は次々と唇を押し付けていった。唾液が溢れてくる。濡れた唇と舌を杏奈の顎のラインに這わせ、うなじへと下ろした。カットソーの上から今まで寄り添ったときに身に僅かに触れるだけで嬉しかった柔らかな胸乳を掴み、その感触を憶えるように何度もまさぐった。
「優くん……」
 もう一度杏奈が自分を呼ぶ声がした。涙声で震えている。
 こんなことする奴は人間のクズだ。
 頭の中で自分を呪いながら、優也は杏奈を抱きしめ、腰もお尻も、体中を摩り回して、唇はネックレスが覗く襟元の鎖骨にまで押し付けていた。
 優也に欲情をぶつけられて、杏奈は悲しい思いとは裏腹に、待ち望んだ優也の手と唇が這うごとに肌を疼かせていた。
 ――今日が最後なんだ。
「優くん……、お願い」
 杏奈は背けていた顔を上げた。すぐ前に優也の顔がある。瞬きをして視界を濁す涙を目尻から流し落とすと、明瞭になった優也の瞳に焦点を合わせた。「言って……。ちゃんと」
「……何を?」
「したい、って」
 その言葉に優也は怯んだ。人間のクズへと自分を堕落させ、杏奈を犯してしまいたかった。しかし見つめてくるのは、やはり恋いて止まない杏奈だった。初めて知った、この苦しいが心地良くもあった想いまで忽せにできなかった。
「先生は……、ヒドいよ」
「……ごめんね」
「福島に行かせたいから、させてくれるの?」
「そうじゃないよ」
 杏奈は優也の睫毛から落ちてくる涙を頬に浴びながら、両手で優也の顔を撫でた。「でも、優くんは福島に行かなきゃならないの」
「どうして?」
「……言ったでしょ? 先生、何でも知ってるわけじゃないよ」
 優也は哀しみに満ちたままの顔を下ろしていった。唇が触れる。上唇と下唇を挟み合わせるように、何度も音を立ててはみあった。やがて優也が舌を唇の間に差し込むと、杏奈は両手を優也の首に回して彼を迎えた。杏奈は流れ込んでくる唾液を喉を鳴らして呑み込んだ。
「……お願い。優くん」
 杏奈が顔を離し、涙だけではなく潤んだ瞳で、もう一度頼む。
「……イヤだ。僕はここで暮らしたい。一人でもいいから暮らしたい。先生が来るのを待ってるよっ」
 十三歳よりももっと年少の、いとけない子供のようなエゴを見せる優也の髪を指で擦り、
「無理だよ……。一人でなんかまだ暮らせないでしょ」
 と言った。
「働くよ。十八歳になったら、先生を……」
 優也の言葉は杏奈のキスで止められた。
「優くん。私ね、そんなに待てない」
 涙目の笑顔で杏奈は優也を抱きしめ、耳元で言った。「……待てない。オリンピック2回来ちゃうよ? そこまでガマンさせられたら、私、死んじゃうと思う」
「……」
「お願い、優くん」
 みたび杏奈は優也に頼んだ。「……私と、したい?」
「したら、離れ離れになるんでしょ?」
「……うん」
「ひどいよ」
「うん。……、……私と、したい?」
「先生は、僕としたいの?」
「……いちいちそんなこと聞いたらダメって言ったでしょ?」
 杏奈は己を四つん這いに跨いでいる優也の、ジーンズの前に手を添えた。ビクンと優也が腰を戦かせる。ジーンズの上からでもわかるほど、そこは硬くなっていた。両手で前のボタンを外し、ジッパーを下ろすと、ブリーフの前には湯気が出るほどに熱くヌメった染みができていた。
 これで最後だ――。
「ね、優くん。お父さんが迎えに来たら、一緒に福島に行くんだよ?」
「……やめて、先生……」
 そうは言っても、杏奈のネイルの爪先で下着の上から撫でられると、振り払うこともできずに腰がヒクついてしまう。


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