6.-1
その無味乾燥な個室のベッドで板東は私に身体を押し付け、はあはあと荒い息を繰り返しながら重なっていました。私は板東から顔を背け、表情を失ったまま目をぎゅっと閉じていました。
結局始めから終わりまで、私は何も感じることができませんでした。快感はもちろん安心感も温かさも……。そして不思議なことにこの男に対する嫌悪感さえも。
ぐったりと力を抜き、私に覆い被さっていた板東の身体はひどく重く感じました。合わさった肌が二人の汗でぬるぬるとぬめることに、私は不快感を覚えていました。すでに身体の熱さはすっかり冷めてしまっていました。しかし、奥深いところには不完全燃焼でくすぶり続ける疼きがまだ残っていました。
息を整えながら板東はまた私の口を舐め始めました。熱い息が何度も容赦なく頬や瞼にかかり、私は思わず身震いをして身体を堅くしました。
「今夜も良かったよ、真雪」板東は私の髪を優しく撫でながら言いました。「ところで、真雪は、昨夜もそうだったけどセックスの時、興奮して登り詰める時に相手の名前を呼ばないんだね、って言うか、あんまり声を出さないね」
「……主任こそ」
板東はにやりと笑って私の目を見つめました。
「彼のことを想像しながらイってもよかったのに」
今の行為で私がイけなかったばかりか、ほとんど興奮らしいものを感じていなかったことなど、この男には解っていないのでした。その上自分が私を気持ちよくさせたと勘違いしたのか、自信たっぷりににやにやしながら、私の耳に口を近づけ囁くように言い放ったのです。
「僕とのセックスの方がずっといいだろう? 彼のこと、もう忘れちゃう?」