俺にしなよ-3
「告白されたっ!?しかもあのチャラ君にっ!?」
この日もあいも変わらず様々なアイスを楽しむ人々で賑わうフォーティーワンアイス店。
学校帰りに、友人の一大事に声を荒げる菫。
「あのヤロー、何と言う事を!」
「……。」
「それで?」
「えっ?」
「何て答えたのよっ!?」
「そりゃー……。」
「……まさか、「はいっ!」何て返事した訳じゃ…。」
「まさか!無論断ったよっ!」
あの後、真剣な眼差しで私に告白をする彼を、止まった時間が再び動き出したように、彼を突き飛ばし「やめてよっ!…そんな冗談。笑えないっ!」と言い放ち。
ホント、ふざけないで欲しい…。幾ら陽気な奴で私を元気づけてくれた良い人だからって
ふいにデパートで楽しく過ごした日を思い返し。
昨日は、本当に…。
まるで、恋人とデートをしているみたい……。
!?
何を考えて居るんだ?私。
彼は、彼はただの友達、自分でもそう言ったじゃない。
揺れる心。菫にはそんな想いがすぐに察したようで。改めてゆっくりとした口調で私に語りかける。
「…アンタまさかアイツに好意を抱いたんじゃ……。」
「!そっそんなまさか、何を言ってるのよ!このゴーヤ眼鏡!」
目元が泳いでいる、我ながら情けない。そうだ、彼はただの友達…。なのに妙な感情が。
そんな、まさか。…だって、私には…私には。
亡くなったアノ人が、頭に浮かび。
「いい!?アンタには恋人が居るのよ。…そりゃーもうー、この世には居ないけど…。」
「……。」
「でもっ!彼は生きているのよっ!…杏の心の中で、ずっと。」
「それは…。」
菫の言う通り、私には絆が居る。彼が亡くなって自分は別の男と付き合う、何て…。
「苦しいのは解る、寂しくて今でも何処かで生きているんでないかって思いたくなるのも
解る!でもねっ!アイツと付き合い恋人にしたら彼はどう思う?そんなの長谷川君に対しての立派な裏切り行為。アンタは長谷川君と居るのが一番お似合い、他の男と居るのなんて考えられないっ!」
「菫…。」
「アンタと彼との愛はそんな事で崩れたりしないでしょ!?」
「……。」
ホント彼女の言う通りだ。迷いの霧が一気に吹き飛ばされたようだ。
そう、私は一体何を考えているんだ。
それじゃーまるで浮気、いえ浮気そのもの。
陽気で、ちょっと落ち込んでいる時に優しくされたからって…。
私が好き?フン!マジで冗談じゃない!
こっちは彼氏持ちだ、天国へ旅立っているけど、私の心の中でずっと生き続けている。
人が弱りきっている時にあんな事するなんて、卑怯者。
私は寂しくなんてない!決して。
凍えた体を包み込む存在何て、求めない…、求めないんだから……。