願望達成-1
金曜日の放課後、写真部の部室で児玉は佐伯玲奈を待っていた。
昨日撮った写真は上出来だ。音楽準備室のソファーで、仰向けになって紫のスリップの胸元をはだけ、雪のように白い乳房を露出させている女教師。よく撮れているぜ。もう一枚は、ソファーの傍らに立って唖然としている和也。和也を撮った写真の隅にも玲奈の姿態が写っている。動かぬ証拠だ。
児玉は煙草をくゆらせながら思案する。
もしも、玲奈先生が昨日の出来事を校長たちに話せば、願望達成どころか、俺たちは学校を退学になる。しかしそうなれば、和也も同罪だ。女教師と生徒が愛しあうなんて、許される筈がない。
和也のために、あの女は秘密を守るだろう。
玲奈先生、遅いなあ〜。児玉はさきほどから立て続けに煙草を吸っていた。部室の中は煙草の匂いが充満している。
扉をノックする小さな音が聞こえた。
玲奈だ。
「先生かい? 」
小さな声で「はい」と返事があった。
「入りなよ」
部室に入ってきた佐伯玲奈の顔はこわばっていた。くりっとした瞳に憂いの色が見える。
ふだんの明るい表情もそそられるが、沈んだ表情もいい。美しいぜ……。虐めて泣かせたくなるほどの美貌だ。
「ここに来ることは、誰にも言わなかっただろうな?」
「言ってません」
両肩に飾りリボンをあしらった純白のブラウスが清楚な玲奈に似合っていた。ひざ上10センチくらいのフレアスカートはブラック。そそられるセンスの良さだが、警戒したのか、ベージュのパンティストッキングを履いていた。
「先生、暑いだろう……。パンスト脱ぎなよ」
「いえ……。児玉くん、お金で解決できるなら、少しだけですけど、用意しました……。本当はこんなことしたくないけど……」
玲奈は手提げバッグから封筒を取り出した。
児玉は血が逆流する思いだった。
「金だと! 金なんかいらないんだよ! 俺は、先生の裸が見たい! それだけだ!」
「いいかげんにしなさい。あなたの振る舞いを校長先生に報告するわ」
「和也とのことも言えよ。あいつ退学になるぜ」