愛しいお姫様-4
「だからかな?ランスロット王子とリュディヴィーヌがね『ジェノビアは何も変わっていない、むしろデレクシスにこそ変わってくれ』って言ったんだ」
「お兄様が?」
「おじ様が鈍感過ぎて見ていられなかったんだろうね……でもねえ、何をどう変われば良いのかさっぱりでさ」
正直、自分でも救い難いと思う。
「それで今日あった事を考えてみたんだ。ジェノビアが淑女らしく振る舞ってて『大人になったんだな』って思った。もう私の可愛いお姫様じゃないんだなってさ」
デレクシスのその言葉にジェノビアは驚いて振り向き、首を盛大に横に振った。
「いいえ!いいえ!ノービィはずっとおじ様だけのジェノビアです!」
ジェノビアは昔っから変わらない。
いつでもデレクシスに好意を向けてくれていた。
ジェノビアは大好きだと何度も何度も伝えていたのに、デレクシスはというと子供の言う事だと気にもしていなかった。
「うん、多分、おじ様が変わらなきゃいけないのはそこなんだと思う」
「……え?」
「おじ様にとってジェノビアは可愛い可愛いお姫様だったんだけど、さっき部屋に入った時いつもと違う匂いがしたんだ」
それを聞いてジェノビアはカアァッと赤くなり、慌てて前を向いて縮こまる。
「誰か来たのかな?って思ったら無性に苛ついた。私のお姫様の部屋に勝手に入るなってね。それって嫉妬って言うんだよね」
大人気無くても、狡くても……今更でも良い。
こんなに一途でこんなに可愛いお姫様を、自分のモノにしたい……そう思った。
「大好きだよ、ジェノビア。これからも私だけのお姫様で居てくれるかい?」
ジェノビアは自分の耳を疑い、硬直したまま。
しかし、暫くすると肩がぶるぶる震えだした。
「ジェノビア?」
「お、お、お、おじ様?!」
ぐるりと身体ごと振り向いたジェノビアは、デレクシスに股がる姿勢で彼の頬を手で挟む。
「ノービィはおじ様が大好きです!」
「私も大好き……いや、違うな……愛してるよ」
デレクシスの応えにジェノビアは赤い顔をキラキラと輝かした。
ずっと届かなかった想いが伝わり、なおかつ返ってくる。
今までスルーされ続けていたジェノビアにとって、これ以上に嬉しい事はなかった。