愛しいお姫様-3
そろっと視線を上げると、ニヤニヤと笑っているデレクシス。
「か、からかってらっしゃいます?」
「まさか。大好きだよ、ジェノビア」
デレクシスの言葉を聞いたジェノビアは、喜ぶ所か疑惑の表情でデレクシスを睨んだ。
「やっぱり、からかってますわ」
ジェノビアはぷうっと膨れてツンっと横を向く。
「からかってないよ?こんな欲情した匂いの女をからかう程、私は枯れてないからね」
「へ?」
デレクシスの口から思ってもみない言葉が出て、ジェノビアは耳を疑った。
「私が部屋に来る前、1人でナニをしていたのかな?」
デレクシスには確信があった。
女の匂いはあるが男の匂いは無い。
だとしたらジェノビアは1人で自分を慰めていたに違いない。
案の定、目の前のジェノビアの顔はあり得ない程に真っ赤に染まっていった。
「何を想像してたんだい?」
デレクシスの質問に耐えられなくなったジェノビアは、両手で顔を隠していやいやと首を振る。
(我慢できないよなぁ)
ついさっき自分の気持ちに気付いたばかりだというのに、こんなに可愛い反応をされたら枯れていても勃ちそうだ。
「……おじ様……ノービィの事嫌いになった?」
ジェノビアは顔を覆った手の指の間から覗き見、幼い時と同じ口調で聞く。
「嫌いになんかならないよ」
「だって……ノービィ、いやらしいでしょ?」
「いやらしいジェノビアはもっと好きだよ?」
「……本当?」
ジェノビアは涙目でウルウルとデレクシスを見つめた。
「ジェノビア、おいで」
デレクシスは少し椅子を引くとジェノビアを手招きする。
小さい頃、彼女がぐずった時には良く膝に乗せたものだ。
ジェノビアは戸惑いつつも素直にデレクシスの膝に座る。
「おじ様はねえ、かなり鈍感なんだ」
人の本質を見抜く洞察力はあるが、人の本音は見抜けない。
つまり、その人がどんな人物か信用出来るか否かは分かるのだが、その人が何を考えているかはさっぱりなのだ。
「鈍感過ぎて自分の本音も分からない位ね」
デレクシスが何故そんな話をするのか分からずに、ジェノビアは少し顔を動かしてデレクシスを見上げた。
視線を感じたデレクシスは、ジェノビアを見返して苦笑する。