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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《アラベクス》-6

………………
「緊張しているのか?」
 振り向くと籠崎龍奏が、いつも通りの黒いスーツを着て立っていた。しかし、オールバックで眼鏡姿。笑顔も絶えないし…
「籠崎さん、どうしたんですか?なんかいつもと違う気が…」
「ああ…。これは《山形先生仕様》だ。あんまり深く考えなくていい。……それより、大丈夫か?」
 体育館の時計を見上げると、ライブ開始まで後1時間も無い。
「正直、テレビより緊張してますね。……やっと苺に逢えるんですよね。…本当に夢みたいで。」
 膝が少し笑っている。
 …不安、緊張、恐怖…考え出したら止まらない、このマイナス思考…。
 『苺ガ今デモ俺ヲ好キダト言ウ保証ハ無イ』

「山形先生っ!」
「よう、秋田 千鶴!」
 体育館の舞台袖から、赤ちゃんを抱っこした背の高いグラマーな女性…秋田 千鶴と言う事は……
「恭介の奥さん?」
「あ、どうもっ」
 驚いた…。ハーフなんだろうか?異国の血を感じさせる彫りの深い顔とグラマーな体付き。…ハッキリ言って美人だ。
「せーんせっ、杏樹だよ〜」
 腕の中で不思議そうな顔をしている赤ちゃん…杏樹という名前らしい。
「千鶴、オレンジジュースで良い?」
 舞台袖からまた一人。手には飲み物が入ったビニール袋を下げて入って来た。……先程の恭介の奥さん、秋田 千鶴とは対照的な純日本人…日本人形みたいな女性だ。
「紫乃、サンキュー!」
「紫乃、悪いな。重かったか?」
 ……?
「い…いえ、大丈夫。珈琲、飲むでしょ?」
「ああ。」
 紫乃と呼ばれている日本人形みたいな女性と、籠崎龍奏の間には不思議な…人を寄せ付けない様な雰囲気がある。
「紫乃はね、先生の彼女だよ。ちなみに私の親友ね」
 不思議そうな顔をしていた俺の為に、恭介の奥さんは説明してくれた。
「そうですか…。」
 いつもと違う…目元の緩み加減や口元の笑み。籠崎龍奏も只の男、らしい。

 …だだだだだだだだ…

 音のする方を見ると、第1体育館で演奏をしていた吹奏楽部員がこちらに移動して来た。どうやら、そろそろ卒業式も終わりらしい。
「キャー、山形先生!お久し振りですっ」
「あ!本当に山形先生だっ!」
 楽器を片手に籠崎龍奏に群がる女性徒達。
「はいはい。みんな久しぶり。とにかく時間無いからチューニング始めるよ?」
「はぁーい」

 舞台は通常の広さでは入りきれない為、雛段を敷き詰め舞台を倍の広さに確保した。
 その雛段の中央にグランドピアノとマイクスタンド。そして俺達を囲むように放射線上に半円を描き、吹奏楽部員の椅子と譜面台がセットされている。

「じゃ、音…頂戴。」
 ざわついていた部員達が自分の席に着く。籠崎龍奏が声を掛け、手を振り上げた瞬間……全員が先程とは全く違う、真剣な面持ちでチューニングの音を出した。
 ―ぷぁぁぁぁぁ…
「トランペット、高い。もっと下げて………クラリネットは上げて。ちょっとで良いから。」
 出しっぱなしの全員の音を耳で聞き分け、的確に指摘する。指摘されたパートは管を抜き差しして音を調節する。
 一通り直させ、満足のいく音になると曲の出だしの音を確認したり、今日の進み具合の説明を始めた。


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