可愛いお姫様-1
初めてその子を見た時、とても懐かしい感じがした。
初めてその子の蒼い目を見た時、愛する人を思い出した。
その子はまだ良く見えていないだろう目をパチパチさせて、最高の笑顔を見せてくれた。
何故か、涙が出る程嬉しかった。
「はじめまして。ようこそ、光の世界へ」
この子を、全身全霊をかけて守ろう……そう、思った。
年に2度程、その子ジェノビアの元を訪れたデレクシスは、その度に沢山のお土産を持っていった。
南の大陸の珍しい宝石や可愛いぬいぐるみ、沢山の絵本。
「おじ様おじ様。ノービィ、このご本が好き♪」
彼女が小さな手で掲げた絵本を見た時、デレクシスの顔が思わずひきつった。
『精霊王子』
何年か前に著者が「貴方をモデルに書きました!出版してもいいですか?」と送ってきたのを、側近の男が面白がって勝手に許可した絵本。
内容は……乱暴で我が儘な王子様が改心して、精霊さんと仲良くなりました、めでたしめでたし……というありふれたものだったが、自分がモデルだと思うと複雑な気持ちになる。
「そ、そうかい?」
「うん♪あのね、精霊さんが出てくるお話大好きなの♪」
ああ、成る程……と納得した途端。
「それに、この王子様、おじ様に似てるもの♪」
顔を赤らめてモジモジとそんな事を言われ、再び顔がひきつった。
「に、似てる……かい?」
「うん♪」
「そ、そうかい……」
確かに「精霊なんて居るもんか」とか思ってたし?
居ると知ってからも便利な家畜ぐらいにしか思ってなかったし?
ああ、考えれば考える程胸が痛い……デレクシスはガクンと項垂れる。
『ククッ(分かる人には分かるもんだね)』
相棒の風の精霊ザックが喉を鳴らして笑うのを、ジト目で睨むデレクシスだった。
可愛いお姫様はすくすくと育っていった。
父親譲りの金髪は、母親譲りのふわふわな髪質で、撫でてやると凄く柔らかくてデレクシスのお気に入りになった。
深いブルーアイはキラキラとしていて、かつて愛した人とは違う輝きを見せていた。
母親譲りなのは身体つきもそうで、小柄なくせに爆乳。
いつかどこかへ嫁ぐであろう相手が正直羨ましいと思ってしまう。
そんな可愛い可愛いお姫様は今日、めでたく成人式を迎えた。