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交換日記
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交換日記-7

あぁ、絶対に呪われてる……火曜日の悪魔に……



「鏑木さん折れてますね痛み止めと解熱剤と抗生物質出しときますので処方箋を持って薬局に行って下さい私は火曜日と木曜日に居ますので週に一度どちらの曜日でも構わないので来て下さいそれではお大事に次の人どうぞ」

ここは孝介の親父さんの病院。あの後、立ち上がれなくなった俺は親切な警官のパトカーに乗せられ、町で唯一の総合病院であるここに連れてこられた。すれ違った人皆が皆、俺のことを好奇の目で見てきた。パトカーに乗ってたから仕方ないんだろうけど。

自動ドアを出たばかりの俺を迎えた空は、相変わらずご機嫌ななめなねずみ色。美しいはずの秋の午後をその不満顔で覆って隠してしまっている。その空の下、一人中庭のベンチに座る少女。空に木霊する烏の鳴き声。この曇り空とのミスマッチが、逆に美しく思える。


一本ン十万するから絶対壊すなと言われた松葉杖を使い、ベンチの前を過ぎ、警官に降ろしてもらった所まで歩いていく。

ん?

パトカーが何処にも見当たらない。あのポリ公、怪我人を放って帰りやがったな。
仕方ない。母さんでも呼ぶか。
携帯を取り出し、家の番号を押す。


コール音……
出ない

コール音……
出ない

コール音……
家に居る筈なんだけどな

コール音……
仕方ない。携帯にかけるか。


携帯の電話帳の中で、最も使いたくなかった禁断の番号を押す。

十数回のコール音の後、ようやく電話に出た母さん。

「いいところで邪魔するんじゃねえ!」

やっと繋がったと思ったら、速効切られた。何を考えているんだろうか、家の母親は。

もう一度掛けてみる。
今度は一回のコール音が鳴り切る前にとってきた。

「あの、母さ……」
「今父ちゃんと楽しんでんだ! 後一時間は帰ってくんなよ!!」

また切られた。
こんな時間からを何やっているんだ、あの馬鹿夫婦は。だが、今もう一度電話を掛ければ、間違いなく迎えに来てもらえなくなるだろう。仕方がないから待合室で時間を潰すことにした。




そろそろ一時間経っただろうか。読んだことのある週刊少年誌を二周もしてしまった。話の先が分かっているのに読まなければならないこの苦痛。それもこれも、待ち合い室に雑誌を一冊しか置いていないこの病院と、あの夫婦のせいだ。俺の貴重な一時間を返せ。
心の中では叫んでいても、手はおとなしくリダイヤルのボタンを押そうとしている。
ふと気付き、途中で手を止めた。病院の中だから携帯禁止な筈だ。


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