交換日記-6
「見てくれよ。ここだけ歯が無いだろ?」
いかにも頭の軽そうな三人組に囲まれてる俺。
「痛かったなあ、あれは」
そのうちの一人は例のあいつ。
「兄ちゃんも同じようにしてやろうか?」
俺がとるべき選択は……
1、戦う
2、許しを請う
3、逃げる
前回は不意打ちで殴ったから何とかなったんだけど、今回は逆に不意を突かれた。それ以前に一対三は反則だろう。1は消えたな。
謝るって言っても今のこの状況で謝罪しても無駄だろう。大体謝って許してくれるもんなら三人で来ないだろうし。2も無理、と。
やっぱり3しかないようだ。ブラックもホワイトも声を揃えて逃げろって叫んでいる。問題はどうやって逃げるかだ。
「どうした? 兄ちゃん。怖くてションベンでもちびっちまたか?」
偶然にも足下に空き缶が落ちてる。これを投げつけて怯んだ隙にエスケープ。我ながら完璧な作戦だ。
思い立ったが何とやら。早速しゃがんで、空き缶を手に取る。
「そんなもん拾って、どうしようってんだ」
どうすると聞かれて、素直に答えるわけないがだろう。心の中でそう呟き、進路上にいる奴目掛け、渾身の力を込めて投げつけた。顔面向かって一直線。
額にクリーンヒットした空き缶。一瞬生まれた隙をついて、走り去ろうとする俺。
何もかもが予想通りだった。完璧に成功したと思った。
が、最後に笑ったのはやはり悪だ。
二、三歩走ったところで、何かを踏ん付けて激しく転んだ。右足首に鈍く重い痛みを感じる。下手をすると、捻挫ぐらいしてしまってるかもしれない。
「えらくナメた真似してくれるじゃねえか」
目の前に転がる、やたらと見覚えのあるペットボトル。俺が猫にぶつけたのは二週間前だけど、これは恐らく俺が投げたものだろう。何故なら中身の残り具合が俺の捨てたやつと同じぐらいだから。
「覚悟は出来てるんだろうな」
状況はさっきよりも悪化した。足をくじいた俺。さらにヒートアップする三人。
やられる。そう覚悟した時、
「こら、そこ! 何をしている!」
「やべえ、ポリ公だ。逃げるぞ」
助けに現れたナイスガイ。乗っている白黒のパトカーが赤いスポーツカーに見える。
「きみ、大丈夫かね?」
と尋ねてくる警官。
はい、大丈夫です。と元気よく立ち上がろうとしたら、
「はいいいぃっっ!!」
あまりの足の痛みに思わず奇声を上げてしまった。
「大丈夫か!?」
かなり慌てた感じで尋ねてくる警官。