交換日記-4
『それじゃあお名前教えて頂けませんか? それとお年も……』
ブラックと友情を確認し合っている間に返事がきていたようだ。直ぐさま右手に持ったシャーペンを軽快に走らせる。
『鏑木 正人(かぶらぎ まさと)十七歳。鏑木って画数多いから正人でいいよ。君の名前も教えてもらえるかな?』
直ぐに返事がきた。女の子らしい丸っこい字がゆっくりと浮かんでくる。
この日から俺と彼女の、奇妙な日記帳を通しての奇妙な交換日記がスタートした。
「うふふっ。だ〜れだっ?」
特に部活動に励んでる訳でもないからさっさと帰ろうとしていた俺を、気色悪い声を添えて目隠ししてきた変態。こんな事をしてくるやつは一人しかいない。
「孝介か……なんの用だ?」
「えっとね、今日みんなでカラオケ行くんだ〜。まさりんも行かなぁ〜い?」
上土谷 孝介(うえつちや こうすけ)。幼稚園の年少組から今までずっと同じクラスという超の付く腐れ縁。変なヤツだが、こいつは俺の数少ない親友のうちの一人だ。
「ど〜した、まさっち。ノーリアクションは寂しいぜ」
一見バカっぽい、てかどっからどう見てもただの馬鹿にしか見えないが、実はかなり頭がいい。ちなみにこいつの親父さんは病院の院長をやっている。
「悪いな、孝介。今日はやめとくわ」
「そんな……さては女! 俺という者がありながら……」
女か。当たらずとも遠からずってところだな。
「まあそんなとこかな。それじゃ先帰らさせてもらうわ」
後ろで孝介が「覚えてやがれこの浮気者〜!」とか叫んでたけど、無視率百パーセントでさっさと帰る。
家に着くと、早速アレを取り出し、右手にシャーペンを装備する。
『おっす。調子はどうよ?』
アレというのはこれ。あの日、偶然拾った少し厚めの帳面。
『おっすです。私は結構元気ですよ。正人さんはどうですか?』
『めっちゃ絶好調! 今日は体育があったからさ』
これを拾ってからの一週間。俺は毎日彼女との会話を楽しんでいる。
『いいな〜。私も体育、好きなんですよね』
『そうなんだ。好きな種目、何?』
話す内容は特に変わったものでもないけど、学校の野郎共と馬鹿な事をするよりも何故かおもしろい。