交換日記-11
「大丈夫だったのなら教えてくれればよかったのに」
「私もそう思ったんですけど、手術の後に目が覚めたら日記帳がなくなってたんですよ」
数日後、病院のベンチに腰掛ける俺と彼女。
「本当に驚いたよ。真理ちゃんが居ないって聞いた時は」
「一年も入院しませんよ。もともと体は丈夫なほうなんですから」
今は同い年なのに、相変わらず丁寧語で話す彼女。
「まあ良かったよ。君が無事で」
「それはそうと……」
まあ別にそれが特別どうって事もないんだけど。
「どうした?」
「これからはどうします?」
そういえば呼び方がさんから君に変わった。
「何が?」
「交換日記……」
こうして話していれば、いつかはもっと親しい話し方をしてくれるようになるだろう。
「ほら、これ」
「え?」
一冊の厚い帳面。表紙の上の部分に‘Diary’と綺麗な筆記体で書かれた文字。
「どうした? 嫌なのか?」
「いいえ……これからもよろしくお願いします」
携帯電話よりもこの方が深く繋がれるような気がしたから。
「こちらこそ」
そう言って微笑む。
文字が浮かび上がるような事はもうないであろう日記帳。だけどこれからもコイツに世話になってもらうことにしよう。彼女との関係が切れないように。
〜fin