肉蕾を辱める-6
「やめろ!」
怒号が聞こえた。後ろ手にされて縛られている和也だった。
「おい、静かにしろ」
志鎌は後ろから和也の顎をがっしりと掴んだ。その手を顎を振って外した。
「僕を殴りたければ、殴ればいい……。生きてさえいれば、おまえらを訴えてやる。校長や理事長。警察にだって行くぞ!」
「志鎌くん、そいつを黙らせてくれ。今いいことしてんだよ。頼む」
志鎌は薄ら笑いを浮かべた。
「児玉くん、このガキ、自爆テロするかもな」
「自爆テロ?」
「自分は、半殺しの目にあおうが、学校を辞めようが、俺たちを訴えるつもりだぜ」
「そんな……。だったら、玲奈先生とセックスできないのか?」
志鎌はにやりとした。怜悧な笑いだ。
「この、梶野和也が見ていないところで、セックスすればいい。玲奈先生もそれを望んでいるさ」
「先生が……」
志鎌の言葉に耳を疑った。
「ああ、相思相愛になってセックスすれば、和也はあんたを訴えられない。いい考えだろう」
「いつ……」
「早いほうがいい。俺が見守っていてやる。場所と時間はあんたから玲奈先生に連絡しなよ」
「相思相愛……そんな……」
玲奈は眉根を寄せて、児玉と志鎌を交互に見てきた。嫌悪と疑心が入り混ざった目の色であった。
「梶野和也くん、君の夢は優れた音楽家になることだろう。夢と引き換えに、自己犠牲の道を選んでは、後悔するぜ」
志鎌の忠告は的を得ている。児玉は脱帽した。
「和也、しばらく学校を休んでくれよ」
梶野和也の目を見た。児玉の意向には承服できないと目の色で示してきた。
二人は睨み合った。
「梶野、家に帰ったら、頭を冷やして考えろ」
志鎌は、捨てぜりふを吐いて、足早に去っていった。