肉蕾を辱める-4
児玉という生徒は、首からぶら下げていたカメラを構えてシャッターを押した。瞬間、フラッシュが焚かれた。
「えへっ、先生撮ったぜ」
児玉は薄ら笑いを浮かべた。
なんて卑劣な男なんだ。和也は頭に血が上った。
「先生を撮るな!」
児玉に掴み掛かる。だが次の瞬間、膝に痛みが走った。蹴りが入ったのだ。前のめりに崩れて、膝を手で押さえてしまった。
児玉はズボンの右ポケットから短いナイフを取り出す。刃を立てた。
絶対に負けねえ。
「児玉くん、やめて!」
玲奈の喉から悲痛な叫び声が上がった。
「あんたは教師なんかじゃない。スケベないい女だ」
梶野和也を威嚇しながら回り込んでドアに近付く。
シナリオどおりにやってやるぜ。
ドアのロックを外した。
「カメラを渡せ」
和也はじりじりと迫ってきた。
「それ以上来るな! 刺す!」
威嚇しながら左ポケットからケータイを取り出した。ワンタッチ発信で志鎌健二に掛ける。
隙を突かれた。和也は刃の下を潜り、右手首を捻ってきた。
「クソガキ!」
児玉は叫んで抗ったが、ナイフは振り落とされた。和也はカメラを奪い取ろうとした。激しく揉み合う。そのとき足音が聞こえた。ドアが外から開いて男が飛び込んできた。
和也は吹っ飛ばされて尻餅をついた。苦悶しながら鳩尾に手を置いている。
「志鎌くん、凄いじゃないか!」
「自分でもびっくりさ。見事な蹴りだったな……」
志鎌は和也の後ろに回った。
「しばらく、おとなしくしていろ。逆らったら殺す」
和也の両腕を掴んで後ろで合わせた。茶色の紐で手首を縛った。
志鎌は信頼できるぜ。児玉保昭は感心した。
気力が萎えたのか? がっくりしている梶野和也に一瞥をくれると、ソファーで身じろぎもしない玲奈を見つめた。
胸元を手のひらで隠して青ざめている。目には哀切の色があった。