和解-3
プップーーっ!!
激しいクラクションを耳にし、思わず怯み歩道へ戻る。回りの人が何事かと視線を
チクチクさせる。
はぁ、何してるんだろ自分。
最高にかっこ悪い、虚しい…。
僕は結局、最期の最期で死ぬ事すら出来ずにいた。
生きる意味何て無い。
そう悲観しひたすらアスファルトに暗い顔を向けていると…。
「ゆきりん、もう祭りに行ったって?」
浴衣を身に纏った女の子が二人、僕の横を通り過ぎる。
祭り、そういやこの時期になると地元で祭りがあるな。
去年一昨年に祭りに行って、見慣れたイベントショーを毎回観て、東京ケーキやチョコ
バナナを口にしていた事を思い浮かべる。
僕は特に理由も無く、密かに彼女達の後を追い、その祭り会場へ足を運び。
出店が沢山並び、小学生を中心に多くの客で賑わうお祭り会場。
「変わってないなぁー。」
そう呟き、もうじき死ぬ僕が一人、会場を歩き回ると。
「うおぉー、やぁーるねぇーお譲ちゃん!」
「ひっひひぃーんっ!♪」
金魚救いと書かれた出店の下で、太い歓喜の声を耳にし、何気なく首を向けると。
「!!」
僕は目を丸くした。その先に自分の良く知る人物が瞳に写り。
「いやー、沢山救ったねぇー杏。」
「うん!」
「また前見たいに「今夜は焼き魚かなー」とか言わないでね、金魚がビクつくから。」
「んもぅー誰がそんな下らない事をー。…さてさて菫、鯛焼きでも喰おうか?」
変わらない明るさで御園サンと肩を並べ祭りを愉しむ杏。
ふいに最期の旅行を思い出す。
僕が死んでも、君は変わらず明るく笑っていてくれ。
そう彼女に語った時の杏の悲しい顔は今でも頭から離れられない。
「杏…。」
もう充分に解っている、僕が消えることが彼女にとってどんだけ不幸せな事かと。
最愛の人を失い、もう二度と会えない…。
今でもポッカリと大きく穴が開き、泣き出したい想いで一杯一杯なのだろう。
ダガ、この祭りで見つけた彼女の顔はとてもソレを思わせない感じだった。
「君は、もしかして…。」
そうだ、彼女は言いつけを、僕の無理難題とも言えるお願いを聞き入れてくれたのだ。
僕は、何かの縁とも言える彼女との再会を得た後、杏が明るく元気に微笑んでいる事に
心からホッとし、彼女達に気付かれぬよう、賑やかな祭り会場に背を向けた。