12.花客に曝け出した散美-2
「んっ……」
声が漏れた。今日一日これを身に着けて屋外を歩き、仕事をする。今日はテレビ番組の撮影と雑誌取材で、モデルの仕事は無い。だがスタイリストが用意する衣装に、この下着を隠しきれる物が無い恐れがあった。それにスタッフや記者など仕事をする中で大勢の人に会うだろうし、何より最近付いたばかりのマネージャの女の子が始終側に居るのだ。こんな淫らな下着を纏っていることは絶対にバレてはいけない……。下着を前にして様々な危惧を巡らせているのに、しかしいざ瘤を入口に押し当て奥に押し込もうとすると、ノブの太みが入口をくぐってヌルリと中に入った。
(私……、バカだ)
濡れている。衣服の下に隠し事を秘めて過ごすのを想像しただけなのに、スムーズに瘤を受け入れるほど潤っていた。左右のジッパーを上げると、悠花の艶かしい下腹部がショーツに包まれる。そしてブラを手に取り、カップでバストを包んで背中のホックを留める。乳首とクリトリスにはしっかりと麻布が触れていた。
「ひゃっ……」
自分がどんな格好になっているのか確認しようと、姿見へ振り向いたそれだけで、麻布が乳首の表面と食い込んだ繊毛でクリトリスを摩ってきた。忽ちブラの中で前に引っ張られるかのような感覚とともに乳首が硬くなり、クリトリスに巻き起こった掻痒が下腹部の肌を疼きで覆う。少し体を動かすだけで三点がもどかしく刺激され、思わず体の中のノブの細身を扉口でギュッと締めてしまっていた。鏡に映る自分の姿は、スタイルの良さが衣装の外観の安っぽさを払拭し、見事なまでの艶美さを醸し出していたが、一方で耳元が赤らみ、瞳が淫靡に潤んでいる貌を見ると、それが自分であるとは信じたくなかった。鏡から視線を反らすように、衣装でこの悪夢のような下着を隠そうとクローゼットに向かう。
「んぁっ……!」
一歩、その長い脚を前に差し出しただけで、悠花は驚いてその場にしゃがみこんだ。瘤に施された凹凸が、麻布の三点への刺激によって敏感になった入口付近の壁を擦ってきたのだ。何気ない普通の歩幅であるのに、その感触は思ったより強烈だった。
(こんなの……、ムリに決まってる)
とてもこれを着けて仕事ができるとは思えなかった。脚を踏み出すたびに、瘤の表面が悠花を擦る。しかもその刺激は入り口付近に与えられるだけで、悠花の性感が充満していくのは、ウィークポイントのある体の奥地であるのに、そこは麻布も瘤も決して直接の刺激を加えてこない。まさしく生殺しという言葉が当てはまるような下着だった。
マネージャが迎えにきて、内心は必死になって平静の表情を繕いながら外に出る。歩みを進めながら、乳首、クリトリス、そして入口へ絶え間なく送り込まれてくる刺激には、やがて体の動きと連動するタイミングを把むことで、何とか外見を取り繕えるほどには慣れてきた。しかし片時も体の中の瘤の存在と、最奥に渦巻く疼きが頭から離れることはなく、一日を過ごしてきたのだった。
――村本以外には絶対に知られてはならない下着姿を、二人の強姦者と、そして一番知られてはならないバゼットにまで晒してしまった。
「何つーパンツ履いてんだよぉ? 社長の趣味?」
コスプレグラビアでなければ、風俗を商売にするような女でしか身に着けないような下着姿を竜二が背後から揶揄する。悠花の視界の端に哀れみとも驚きともつかぬ表情をしているバゼットが映っていたが、とても焦点を合わせてその表情と反応を確かめることはできなかった。
「どうやら社長さんには身に覚えがないみたいだぜ?」
ベッドに横たわっていた健介が立ち上がると、サイドに据えられている電話機の受話器を取りボタンを押す。
「おい、チャックついてんだろ? 横んとこ。それ外してみろよ」受話器から微かに聞こえていた呼出音が切れて、向こうから管理人の女の声が聞こえた。「おいババァ。403にアレ持って来い」
「なんだ? このチャック」
「……いいから外してみろよ。両方」
電話を切って竜二に言うと、健介はベッドに足を組んで座る。
「……まー、じゃぁ、外してみちゃおーな? 脱げちゃうんだろ? ココ外すと。そんくれーは俺でもわかるぜ?」
と、竜二は下卑な笑みを浮かべながら、スカートの手を離し、ジッパーのスライダーを摘もうとしてくる。
「やだっ! やめてっ!」
悠花は激しく腰と脚を揺すり、片手だけ自由な手のひらで小さなスライダーを隠して竜二に掴ませまいとする。
「おらっ! ジッとしろよっ!」
背後に抑えている腕に力を入れて痛みを加えるが、秘密を守りたい一心の悠花はそれに耐えつつ、何としてでもスライダーを竜二の手から守ろうとした。