秘密の四角関係-1
暑い日差しが町を包み始めていた。
田原有美は高校二年生になったばかりだ。
彼女は自分の部屋を整理し、友達を迎える準備をしていた。
<ピンポーン>
「え?もう来たの?!」
有美はバタバタと玄関に走って行った。
ドアを開けると、そこには中村友香(ともか)が有美に手を振っていた。
「あっついね〜」
友香はベッドの縁に腰を下ろした。
「もう5月も中旬だしね」
有美が友香の隣りに座る。
「買って来た?」
「もちろん!」
友香は鞄を開けると、中から紙袋を取り出した。
その中から一冊の本を引っ張り出す。
表紙に『素人投稿セン』と記されていた。
「ねぇ…有美…」
友香は上気した顔で有美を見た。
「友香…」
二人の乙女は唇を重ねる。
「今日は私の番よね?」
友香は唇を離すと、有美に小悪魔のような笑顔で言った。
「わかってるって」
有美はベッドの下から麻縄を取り出すと、友香を縛り始めた。
有美の部屋には、異様な空気が漂っていた。
友香は全裸で後ろ手に縛られている。
それを有美がスルスルとほどいていった。
二人は息を荒げ、しばらくベッドに倒れ込んでいた。
「有美…」
友香が身を起こした。
「なに…?」
有美もゆっくりと身を起こす。
「これ見ようよ」
友香は例の本を手に取る。「そうだね。見よ」
二人は態勢を整えて本を開いた。
そこには一般の読者から投稿された痴態が溢れている。
二人は息を呑んだ。
「あ、見て見て!」
「今月も載ってるね」
友香が指差したのは、PN仁という人の投稿写真だ。
二人はこの仁が大のお気に入りだった。
内容はそんなにハードではなく、しかし、見てて恥ずかしいものが多かったからだ。
雑誌に載り始めたのは、有美と友香のアブノーマルな関係が始まった、ちょうど半年前頃だった。
「私、これくらいの調教されたいな…」
「私も…」
二人は同じ性癖を持つもの同士で、毎回交互に縛っては淫らな事をしていたのだった。
今回の仁の投稿写真の一枚に、首輪を巻かれた全裸の女が、教室のような所で『チンチン』のカッコをしているものがあった。
「ね、ねぇ…これ…」
有美が少し青ざめた様子でその一枚を指差した。
「どうしたの?」
友香は有美の指の先を凝視した。
そこに写っていたのは、机にかけられた手提げ袋であった。
「これ、友香のじゃない?」
「え?」
確かに似ていた。白のトートバッグのようなそれに、「中村」と読めなくもない文字が記されている。
「そ、そうかもしれないけど…」
部屋の中の熱気が冷めきったかのように、二人は微かに寒気を感じた。
「調べてみようよ」
「え?」
有美は目を見開いて友香を見た。
「これは…確か始業式の日に持っていって、忘れて帰ったやつだから…たぶん…」
「土曜か…日曜…」
友香は友達に借りた雑誌を返すため、手提げ袋に入れて持って行ったのだが、その日忘れて帰ったのだった。