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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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なんて言うんですか劣等感-5

自分のしてきたことがどれだけひどいことだったのか、ようやく気付いたあの時の俺は、石澤さんに対して、ちゃんと誠心誠意で謝った。


言葉だけじゃなく、態度で示そうと頭を丸刈りにして。


実は俺は絶壁というコンプレックスがあったから、小さい頃から坊主だけは嫌だったけど、ちゃんと謝れない方が嫌だったから、勇気を出した。


沙織に嫌われたあげく、ダサくなって、もう振り向いてもらえないって躊躇いはあったけれど。


でも、自分の考え方とか行動がいかにバカだったのかを、しっかり認め、変わりたかった。


そんな俺を見てくれたから、石澤さんも最初こそギスギスしていたけれど、次第に心を開いてくれたのかもしれないし、また、沙織も俺と付き合ってくれたのかもしれない。


最初は嫌々ながら付き合ってくれた沙織だったけど、今じゃ俺をちゃんと好きでいてくれている、それは伝わってくるし、俺達の交際は上手くいってると、自負している。


でも、沙織は最低だった俺の姿を知っているし、ふとした時にいつか沙織に振られちゃうんじゃないかってビクビクするときがある。






ポッキーを食べながら、前に座る沙織の横顔を見る。


付き合った頃に比べて、大人っぽく、ますますキレイになった沙織。


こんな可愛い娘が、俺なんかと付き合ってくれてるなんて、たまに信じられない時があるんだ。


州作さんは話題豊富なのか、彼の話に楽しそうに笑っている姿が目に入ってくる。


そういう光景を目の当たりにすると、俺なんかよりもっとレベルの高い男の方が沙織にふさわしいんじゃないかと不安になるんだ。


特に俺は最低な人間だったから。


「……倫平」


上の空で前の二人を眺めていた俺に、修が話しかけてきた。


「お前、コテージ着いたらとにかく沙織と二人でちゃんと話しろ。お前らが二人きりになれるよう、協力するから」


前の二人に聞こえないくらいのボリュームで、そう言う奴を見れば、ポッキーをポリポリ噛じりながらポーカーフェイスという、なんともアンバランスな組み合わせだった。


だけどコイツはこういう男。


普段はヘラヘラふざけてばかりで、人をおちょくるのが好きな奴だけど、実は周りをよく見ている。


俺が不安になっているのを見透かして、こうやってさりげなく応援してくれて。


クッソ、だからコイツはモテるんだろうな。




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