処女寺 〔前編〕-3
「メイさん。お風呂はいかがでしたかの?」
畳に差し向かいに座った玉泉に聞かれたが、メイは緊張で声がうまく出なかった。ただ、ぎこちない笑顔を向けるだけ……。
「さて……、破瓜の夜は心が張り詰めるでしょう。まずはこれを飲んで、心を落ち着けなされ」
住職の差し出したのは温かいココアだった。両手でカップを受け取り、しばらくじっとしていたが、ひと口飲むと、メイの口から吐息が漏れた。同時に、緊張感も少しは吐き出されたようだった。そして、飲み物が半分ほどになった頃、玉泉は膝行し、メイの右隣に座り直した。
「お手を、拝借しますよ」
そう言って住職はメイの右手を優しく取った。そして、白い手の甲を撫でさする。
「美しい手ですなあ。マニキュアの色も控えめなピンク。これがかえって指の可愛らしさを助長します」耳元で囁くように言う玉泉。その口調はなめらかだった。「御髪(おぐし)は真っ直ぐで烏の濡れ羽色。見事な艶です。毎日、お手入れが大変でしょう」
「……ええ、まあ……」
「その髪に少し隠れていますが、耳もいい形ですなあ。……桃色になっているのは、この部屋が暑いからかな? それとも、少しは興奮なさっている?」
そう言われて、メイの耳朶の赤さが深まった。頬も朱を刷き始めている。
「少し冷ましてあげましょう」
玉泉はメイの耳に息を吹きかけた。くすぐったそうに身をよじる娘。
「ああ、これは失礼。……悪ふざけが過ぎましたな。お詫びします。そのしるしに……」
住職がメイの手の甲に唇を押し当てた。びくっとする娘だったが、玉泉の軽くすぼめた口はそのまま。そして、唇は位置を変え、腕を移動し始めた。ゆっくりと手首から肘、そこから浴衣の袖をそろりとまくり上げて二の腕、さらにはじわじわと肩の近くまで達した。メイは腕を引っ込めようとしていたが、玉泉に巧みに押さえられ、それがままならなかった。男の唇の感触が薄気味悪かったが、嫌な感じを九割として、一割は興奮を催すものであった。その事実に、メイは内心驚いていた。
ここで一旦、カメラ(?)は緋菊の間へと切り替わる。そこでは、これから行われる「伽」の内容を聞かされ、弥生の目が見開かれたままになっていた。なんと、彼女の肛門がまだ処女らしいので、そこを開発するのだと小坊主たちは言ったのだ。普通に情を交わすものだとばかり思っていた弥生は心の準備が出来ておらず、少なからず狼狽した。そんな彼女にかまわず、小坊主たちは白衣も腰衣も脱ぎ捨て、パンツ一丁になっていた。
「奥様、大丈夫ですよ。後ろの穴もじつは立派な性器になるんです」珍念が地蔵菩薩のような顔で淫らなことを口にした。「痛いことはありませんので、私たちに身を委ねてください。そうすれば、アナルセックスの、めくるめく快楽をお教えいたします」
そう言われても、よもや後ろの穴の処女を捧げることになろうとは……、と、弥生は腕を固くかき抱いた。すると、萬念がつかつかと近づき、弥生をいきなり抱きしめた。
「何するんです」という彼女の声と「奥さん!」という萬念の声がかぶった。小坊主が続ける。
「奥さん、好きです! 好きなんです!」
いきなりそう言われ、弥生は面食らった。そして、萬念に抱きしめられたまま身動き出来ない彼女に、珍念がそっと囁きかけた。
「奥様。肛門は出産とは関係ありません。そこの処女を捧げる意味もありません。でも、性の曼荼羅には『肛交』もはっきりと描かれてあるんですよ」
「せ、性の曼荼羅?」
「ええ。一般の方にはお見せ出来ないのが残念ですが、性愛の諸々が余すことなく描かれた細密画です。そこで肛交はけっこう大きく取り扱われています。それゆえ、アナルセックスは奥様も、ぜひとも経験するべきかと……」
「い、意味が分からないわ」
弥生が敢然と拒否しようとしたその時、萬念が彼女を畳に押し倒した。
「好きです、奥さん!」
弥生の頬、耳、そして唇にキスの雨を降らせた。巧みに腕を押さえながら。
「嫌。……やめてえ!」
必死に萬念から逃れようとバタつく熟女の脚を相棒の珍念が押さえた。そして、彼も太腿に接吻をする。
「ああっ、嫌ぁ!」
小坊主らに押さえ込まれ、身体のあちこちにキスの洗礼を受ける40歳。いつしか浴衣ははぎ取られ、恥ずかしいところをあらわにする弥生。熟し切った身体は乳房に萬念の唇を感じて震え、尻に珍念の舌を覚えてひくついた。