威嚇(bluff)-1
青白ボーダー柄の布地は至って少女らしいが、早熟少女の美里亜には些か物足りなさを感じさせた。
どちらかと言えば、もっと大人びた物を身に着けているかと思われたからだ。
これは雑誌記事の受け売りではあるが、ボーダー柄(横縞柄)を好んで身に着ける人間の傾向としては、束縛を嫌い自己主張の強い個性派が多いらしい。
確かに言われてみるとアーティスト系や業界人等、如何にも自己主張が強そうな人々が好んで身に着けている様な気もする。
そう言えば偉大なる芸術家ピカソや日本の楳図かずお氏も……
一方ボーダー柄も身を着ける心理として、“子供、幼さ”の象徴と言うのもあるらしい。
たかが布切れ一枚の事ではあるが、そう考えてみると興味深くもある。
「ちょっ、やだぁ! ダメ、ダメだってばぁ!」
その布切れ縁に指を掛け引き下そうとする俺に、あらためて語尾を強め拒絶の意思を示す美里亜。
車に同乗した段階で“理解”出来ていると思えたが、身体的にはともかく精神的にはまだ“子供”らしい。
「君の“カレ”山本君って、実は“叔父”さんの予備校時代の友達なんだよね。もっとも彼は優秀だったんで……」
こちらもあらためて、美里亜とその“カレ”の置かれている立場を解らせる。
もっとも肝心の話の件である“俺とカレが友達”である部分は、同年代である部分を利用したブラフ(はったり)である。
それは容易にばれる虚仮威しではあったが、今日この場限りにおいては有効な手段であった。
「まだ解らないかな? つまり“叔父さん”は君の“カレ”の事も良く知っているんだよ。自宅や家族から卒業を控える大学。 そしてそれを“破滅させる方法”をね。考えてもごらん、教育実習先の“児童”と付き合ってるなんてばれたらどうなるか? だから、解るだろ……」
言い終えるより早く美里亜から縦縞柄の布切れを引き抜くと、同時に両脚をガッシリ大きく拡げさせ付け加える。
「これから5分だけで良い、そのまましっかり脚を拡げているんだ。解ったかい? そうだ時間もそこにある時計で分かるだろ。たった5分おとなしく言う声を聞けば良いんだ。そうすれば“君とカレ”の事は内緒にするよ」
今日のこの状況から言えば、まさにこれが最善且つ最良の“策”であると思われた。
夕暮れ時と言えど人通りが全く無い訳では無く、あんまり派手に剥くと車中の行為を見咎められる可能性はある。
丁度角度的に言ってもこの程度なら、車外からの“死角”でもありこちらにとって好都合であった。
(思いのほか綺麗な色形をしている)
そう思えるほどに美里亜のスリットは、“少女らしさ”を維持していた。
汐莉の話では“経験済み”の美里亜であったが、その真贋の程が疑われる。