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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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最期の、デート-3

それは息子がまだ幼稚園に通っていた頃だった。

私はお腹を膨まらせ、病院の白いベットで横になっていた、後の長女いずみを誕生させる
為に…。

「大丈夫か?苦しくはないか?」
「えぇ、絆の時で解ってるから…。」

そうベットの横で心配顔をする主人を宥める。

「ママァ…。」
「あぁ、絆も来てくれたの?」

同じく不安な面持ちのジ○リのキャラクターTシャツを身に纏った息子が、弱弱しい声をあげる。右手は主人の手、もう片手には猫のキャラクターのお人形を握り。

話を終え、病室を後に手を握り、妊娠中は家にいてくれる主人の義母さんが待つ自宅へ。
 
浮かない顔でツルツルの床に視線を置く息子。そんな彼に気付いた主人が問う。

「ママなら心配ない、お前がそんなんでどーする?」
「…。」

主人の励ましに勇気づけられる事なく、より一層表情を沈ませ。


とある日。息子は人通りの多い商店街へ足を運んでいた。

「……。」

私達親が良く訪れ、家からここまでの道のりを見様見真似で義母さんに家を出る前に尋ね
そんなか細い記憶を頼りに、小さな体でどうにかここまで辿り付き。

次々に早足で通りすがる自分より遥かに大きい大人達にあたふたしつつ、ある場所を
 思い浮かべその小さな足を動かす。

「ありがとうございましたー、またのお越しをっ!」

元気な声で、花束を両手に抱え店を後にする客の背中に言葉をかける女性。
 その彼女が客を見送り終え、軽く腰に片手を当て、店内へ戻ろうとすると。

「ん?」

店内の付近に小さな人影を目にし、足を止め、その影へ移動すると。

「あらっ!絆ちゃん?どうしたの!?」

おどおどとした自分より遥かに小さい絆に、目を丸くする彼女。

「一人で来たの?」
「……。」

自分から足を運んだにも関わらず、一切のリアクションをしない彼。

何事かと顔を歪ませる花屋で親しい店員のお姉さん。

少しの間が空いた後、彼はようやく口を開き。

「あ、……あの。」
「?」

そして彼女の横に並べられた数々の花束を目にし、目的を果たそうとそたその時。

「絆ぁ!」

心配した義母さんが車で迷子になったであろう彼を探し出していて。

祖母が突然現れ、出そうとした言葉をしまい。それから勢いそのまま連れ戻され、彼が
 しようとしてくれた事などいざ知れず、ただ黙って家を抜け出したダケだと受け取り
 主人と祖母に怒られて。


「んー、何描いてるの?」
「別に…。」

静寂に包まれた居間で一人、クレヨンと画用紙をテーブルに広げ、絵を描く息子。


そして手術の日が訪れ、不安な表情を隠せないでいると、そこに…。

「絆?…。」

病室のドアに見える小さな体。

息子はただ黙って私の方へ淡々と近づき。

「えっ?」

一枚のあどけないクレヨンで描かれた一輪の花。他は全て白紙。

どうやらあの日、息子は私の為に花を買ってプレゼントしようとしてくれたらしい。
 だが案の定義母さんに連れ戻され、息子もこの頃から自分の意思をハッキリ言わない
 子で。仮に連れ戻されなくても、ポケットには十円玉が三枚程度しか持ち合わせて
 おらず、買う事は出来なかったのダガ。

「これを、ママに?」
「……。」

息子は首を縦に振り、そのまま走り去って行った。

絆…

大した芸術性もないただの絵。ダガそれは今の私にとって勇気を与える世界でたった一つ
のかけがえのない宝物。

彼は大好きな母親の為に、暗い顔で落ち込む母親を勇気づける為、自身を震えた立たせ
 知らない遠い街まで誰の手も借りずその小さな足を運ばせたのだ、普段は弱虫で
 引っ込み思案な彼が。

この頃から私は心に想った。

神様、こんな心優しい子を私に授けてくれて有難うござます。

これまでも、そしてこれからも、私はこの子を護っていきたい。

絆…

私は何て愚かな事を…。



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