友達(friend)-1
…… ひとり、ひとり病室での時間が、とても長く感じられる。
あれから、あれからどれ位の“時”が経ったと言うのだろうか?
必死に脆弱な記憶をたどる事を試みる。
(汐莉と恵利子以外の記憶…… そう言えば汐莉の友達の…… 美里亜と言う少女が居たはずだ。そう、俺は美里亜を知って、覚えている)
美里亜を駅まで送り届けた数週間後。
そう教育実習生と付き合っていると言う早熟の少女、汐莉の友達である美里亜。
俺は下校途中の美里亜を待ち伏せていた。
もちろん事前に尾行を繰り返し、自宅や通学経路は十分把握していた事は言うまでもない。
「あれ? 君、み、みりあ……ちゃん? だよね」
偶然を装うかの様なその口調は、多少あざとかったかもしれない。
もっともこれから俺が行おうとする行為を考えれば、その手順等はどうでも良かったのかもしれない。
「…… ?」
振り返り怪訝そうな表情を浮かべる美里亜。
その大人びた表情仕草は汐莉が教えてくれた通り、もうすでに“男”を知ってしまっているそれである。
私服にランドセルの組み合わせでは無く、セーラー服に革鞄を手にしていれば十分中学二、三年生で通用するスタイルである。
話しかけた相手が小学生であるにも関わらず、ひどくドギマギさせられる。
「覚えてないかな? この前君を“カレ”が待つ駅まで送った、磯崎汐莉の叔父なんだけど」
意味有り気に“カレ”と言うフレーズを誇張し、美里亜の記憶を呼び覚まさせる。
「えっ? あっ、あぁ、汐莉ちゃんの……」
「そっ、そそっ、思い出してくれたみたいだね」
美里亜の反応、そして語尾を濁す様子からして、汐莉が全てをこの少女に話している事が想像出来る。
(…… しかし、こうして間近にしてみると、思った以上に…… )
フレアのスカートからすらりと伸びる白い脚に、ブラウス越しにも容易に感じられる胸元は、にわかに小学生である事が疑わせる程である。
「あのぉ〜、汐莉ちゃんの叔父さんが、私に何の用なんですか? 汐莉ならもう家に帰っているはずですよ」
流石に小学生にて、“男”を咥え込んでるだけあってスレている。
いち早く、俺の好色の眼差しに気付いた様子だ。
もっともそれ位の方が、話も早いし“いじりがい”が有るというものだ。
「まぁ、まぁ、そう尖がらずに聞いてくれよ。実は叔父さんあの後……」
俺はおどける様にそう切り出してみた。
「…… 実は叔父さんもあの後、君たちみたいにセックスがしたくてさ、汐莉の事…… そしたら、嫌われちゃって困っているんだ。美里亜ちゃん、叔父さんの相談に乗ってくれないかな?」
「? どうして美里亜が叔父さんなんかの相談に乗らなきゃいけないの。それに汐莉が怒るの当然だし、だいいち叔父さん汐莉の事騙しているでしょ」
どうやらこの少女はれいの“カレ”に、いろんな意味で口を鍛えられているらしい。
「そんな事言って良いのかい? 君の“カレ”、先生の山本君、正確には先生の卵の山本君が…… 君たちの事がバレれば、教育実習どころじゃ無くなるよ。それに叔父さんは、もう汐莉に嫌われてるから、君と汐莉の“友達”関係はかまうところじゃない」
もちろんすでに汐莉に嫌われている話の件は、美里亜から逃げ道を奪う為の作り話である。
もっともこの場合、早急且つ確実に美里亜が確かめる術も無く、より重要なのは愛おしい“カレ”の今後の処遇についてであろう。
俺は非道にも姪の“友達”に対し、文字通り大人気も無くブラフを仕掛けたのだ。
それだけ俺は汐莉の幼い性に、魅せられはじめていたのかもしれなかった。
まだ到底その幼さゆえに、叶うはずの無い汐莉とのセックス。
それをこの“慣らし済み”の少女相手に求めようとしていた。
(なぁに構う事は無い。どうせ、もうたっぷり咥え込んでる餓鬼だ)
俺はそう心中にて毒づき、美里亜の心中を覗き込むように視線を合わせる。
「…… …… ……」
まるで石化した様に、美里亜を長い沈黙が包む。
もっとも逃げようと思えば、いくらでも逃げられる状況である。
それをしない、いや、出来ないのはこちらに分があるに他ならない。
しかし、いつまでもこうしている訳にもいかず、時間そのものも限られている。
そこで俺は……
「なにも“カレ”と同じ事をさせろと言うわけじゃない。ちょっと、そうだな10分位で良いんだよ。そこに止めてある車の中で、君の……」
その言葉に美里亜は少なからず安堵の表情を浮かべ、次に複雑な表情へと移行していった。
いずれにしても変わらず主導権はこちらに有り、結果的に少女は俺に従わざろうえなかった。
俺は少女を車の助手席に招き入れ、人目の付き難い位置に車を移動させた。
「ちょっ、やだぁ!」
俺の行為に、意外なほど過剰に反応する美里亜。
「しっ、大人しくするんだ」
そう説き伏せる様に声を潜め、美里亜に促す。
(スカートを捲り上げた位で騒ぐ様な餓鬼じゃなかろうに。もうしこたま咥え込んで、知ってんだろ?)
本来なら、そう口汚く罵りながら真っ裸に剥いてやりたいところである。