桜花の露、爛漫の秘肉-7
「……兄さま……」
少女の可憐な声に、私は、お別れのキスをしようと思った。
今、考えてみると、それがいけなかった。
別離の思いを込めて少女に口づけしたとたん、彼女は私にしがみついてきた。そして、貪るような接吻を返して きたのだ。細い身体に私は押し倒され、暗い木の根元で、少女に組み敷かれた。
「兄さま……。御免してけへ。……わだし、まんだ、満足してねえの……」
(満足、して、いない?)
少女は突如、着物を大きく乱し、身体を回して尻を向けると、私の男根を口に咥えた。そして、卑猥な音を盛大に 立てて、吸引し始めた。私の目の前には少女の秘裂があり、先刻の交接の余韻か、おどろに半開きになっていた。それが、鼻先に突き出され る。女の愛液と私の精液の臭いが一緒くたに鼻腔になだれ込んできた。少女の舌は私の男根の裏筋を這い、鈴口の先をねぶり、亀頭冠を執拗に 刺激した。かくして、私の一物は性懲りもなく張りを帯びてしまった。少女が振り向き、にいーっと笑う。
「さっき、八重桜の露っこ飲んだはんで、まんだまんだ元気になるよ」
(八重桜の露? まだ元気?)
少女の言葉を辿っているうちに、彼女は私の股間にまたがった。そして、騎乗位で交接を始めた。
後は、またもや、めくるめく愛欲の世界。
私は、五度目、六度目と吐精を続け、睾丸と肛門の間に強い痛みを覚えて気絶するまで、少女に翻弄された。い や、相手は、少女だったのか、娘だったのか、はたまた三十路女なのか、熟女なのか……。よく覚えてはいなかった。
肌寒さを覚え、目を開けると、あたりに霧が立ちこめていた。薄明るい。朝霧だろうか、と思い、半身を上げて いると、声を掛けられた。
「おじさん、大丈夫?」
若い娘の声だった。見ると、長い髪の少女……。私はびくりと後ずさった。
「何? おじさん」
娘も驚いて後ずさる。その格好を見ると、ジャージ姿で、胸には中学校の名称とその子の名前が書かれた布が縫い 付けられていた。そして、霧の向こうから二、三人のジャージ姿が現れ、彼女らも不思議そうな目で、しだれ桜の木の根元でへたりこんでいる 私を見た。
(あ、衣服は……)
自分を見ると、ちゃんと上着は身につけていた。ズボンもしっかり穿いている。
彼女らは中学校の奉仕活動で、早朝の公園の清掃に来ているのだと言った。結局、私は桜見物で酒に酔い、その まま木の根元で寝入ってしまった男と判断された。
彼女らが立ち去ると、私も重い身体を何とか持ち上げて、しだれ桜の幹に手を添えて立ち上がった。そうしたと ころで一つの事実に気づいた。上着がぶかぶかで、ズボンがゆるゆるだったのだ。胸に手を当てると、以前なら少し贅肉があったのに、今はあ ばら骨の感触がそこにあった。もし、ここに鏡があって、自分の顔を見れば、おそらく、げっそりと痩せさらばえているに違いなかった。
私は、ふらふらと、その場を離れた。
振り返りたい衝動に二、三度駆られたが、けっしてそうしなかった。
そんな私を、しだれ桜の古木が、一夜にして満開の枝振りになったしだれ桜が、静かに揺れながら見送ってい た。
(おわり)