レベルゲートT ―リパルーション―-1
後ろのほうで銃声が聞こえる。石で作られたその廊下をジェイは駆けていた。高さ五メートル、幅は三メートルほどの通路で、石作りの壁には、絶えず彼の足音が反響している。そして、その後ろには、10体以上もの銃を持ったアクペチーノ―人型汎用戦闘機 の足音が続く。通路はときより左右にカーブし、くねくねとうねるように進んでいる。ジェイとアクペチーノとの距離は、20メートルくらいだ。時より後ろから銃声のようなものが聞こえるが、うねったこの通路では、とことん壁に阻まれているようだった。
いくつめのカーブだろうか、ジェイが、まるでユーターンのように曲がる通路を抜けた時、通路が、それまでの短調なものから一変した。通路と呼ぶには、もはやふさわしくなく、長いホールのようだ。
「ヒュー」
彼は、軽く口笛を吹いた。戸惑うことなく、一番奥に設置されている台座へと急ぐ。
台座には、一枚の小さなコースターが乗せられていた。しかし、それは黄金に輝き、その重さから、金であることがわかる。彼は一瞬見とれたが、すぐにふところへと忍ばせる。
そのときだった。後ろで銃声が響く、と同時にジェイに銃弾が飛んできた。銃弾の向うには、彼を追いかけてきていた人型汎用戦闘機―アクペチーノが銃の反動で後ろによろけていた。
アクペチーノの電子能が感情をつかさどるなら、やった、と思ったに違いない。全ての銃弾はジェイに向って飛んでいき、当たった・・・はずだった。
が、
「Gのくせに・・・当たるわけねーだろ」
ジェイは、さぞ当たり前のようにつぶやいていた。傷ひとつついていない。
アクペチーのは、マニュアルに従いもう一度銃を発射した。が、やはり、彼に傷ひとつつかない。笑っている彼はなんとも奇妙だった。
なぜ。確かに、彼へ銃弾は飛んでいた。しかし、彼の能力によって、彼へ飛んだ銃弾は全てあたる寸前で向きを変え、上や下や左右、多方向へ向きを変えたのだ。そう、彼のリパルーション(反発)能力、特定の金属でできた物体の向きを、まるで磁石のように反発させ、変化させる能力によって。
「さてさて、任務完了。戻りますか・・・」彼は、不敵な笑みをこぼしながらアクペチーノのいるほう、つまり、もときた道を引き返そうとする。アクペチーノは、やはりマニュアルに従い、もう一度銃をかまえる。
「だから、無駄だって。学習能力の無いっ・・・」
ジェイの声は銃声と同時に止まり、その身体は、なんと後ろへ吹っ飛ばされる。
アクペチーノの放った銃弾がひとつ、彼の左胸に突き刺さっていた・・・。