第三章:監禁,そして壮絶なリンチ-1
久美子が拉致された場所は、距離にして数百メートルほどしか離れていないK高校の野球部が使用しているコンテナの中だった。砂埃と汗の入り混じった臭いが充満する古びた鉄製のコンテナだった。しかし、自分をさらった一団の最後の一人が扉をスライドさせてロックする音を聞いた瞬間、逃れようのない牢獄に幽閉されたかのような恐怖に慄く久美子だった。
裸電球がゆらゆらと揺れる中、欲望に目を血走らせた男子たちに囲まれるだけでも、囚われた乙女の恐怖は想像を絶するものだ。白い体操着に包まれた豊かな上半身を庇うように男達から反らし、ブルマから伸びる素足を横座りの姿勢で折りたたみ、憎き野獣たちをキッと睨み防御の姿勢をとる久美子。しかし、そんな少女の気丈なな姿は獣と化そうとしている男たちの嗜虐心をそそるだけだった。声を震わせて抗議する久美子。
「あ、あなた達…こんなことをしてッ…私を何でさらうのッ?…私を…どうする気?」
「相田の女は可愛いねぇ、でもなかなか気が強そうじゃないか」
6人いる男たちの中で一番、上位の立場にいるとおもわれる、髪を短く刈り込んだ男がニヤつきながら久美子ににじり寄る。
「ま、雅昭を喧嘩に巻き込んだのはあなた達ね」
幼馴染の恋人の名を持ち出された久美子は、思わず恐怖も忘れて相手を睨んだ。雅昭が姿をくらまして以降、学校も周囲の者たちも、校内でトラブルを起こした者は喧嘩両成敗でかたをつけようとしていた。だが、久美子だけは幼友達からカレシに変わった男のことを信じ続けている。雅昭は自分から争いなど起こす男ではないことを…。
「人聞きの悪いことを言うなよ 俺は相田の‘喧嘩友達’っていうだけでさぁ… そのオトモダチが急に姿を消したら、行方を聞くためにカノジョをさらうぐらいのことをするのは普通だろ? いっつも、見てたぜぇ、可愛いおかっぱ頭の美少女ちゃんがウチの校門近くで、稀代のワルを待ちわびてる姿をさぁ〜〜」
男は久美子の顎に手をかけようとする。それを勢いよく振り払う久美子。
「それにしても、女子がいるっていうのは羨ましいやね… うちの学校なんか女は教師のババアしかいないもんだから、ブルマ履いた女子がいるだけでもう…むふふふ」
傍らの男はスケベ心丸出しの顔つきで久美子を眺める。
「久美子ちゃぁん、ブルマ似合うよねぇ パンチラしながら股広げてるところ、最高だったよぉ そのブルマに隠されている‘穴’に興味があるなぁ、僕たち…」
別の男は性欲を隠そうともせず、粘着質な声を出しながら、せまりくるポーズを見せる相手に久美子は嫌悪感を持った。
K工業高校は男子校だ。性に目覚めた男子たちにとっては禁欲に近い世界。久美子のような可憐な少女が、隣に通っている、しかも、それが喧嘩相手の恋人だとすれば、それはもうこの上なく性欲を高ぶらされるスチュエーションであろう。
「獣!! 雅昭があんたたちを殴ったのならば、それは最低の連中を許せなかったからだわッ 私はあんたたちみたいな卑怯な男が一番嫌いよッ」
久美子は潔癖な性格そのままに、ケダモノと称した男たちを罵倒した。
「フフフ、好もうと好まざると相田から受けた屈辱は、お前にたっぷり返してやるよ、お前のその、カラダに…な」
「い、いやッ、いやよッ」
久美子は夢中で叫んだ。
「へへへ、いくら泣けど叫べど、助けは来ねぇよ このコンテナは俺らが女さらってハメる時に使ういわば監獄だぜ 鼓膜が破れるような悲鳴を上げようが、外には聞こえねぇよ さぁ、精々泣き喚きなッ」
久美子に6人の男…。生理的な嫌悪感と恐怖とに耐えられなくなった久美子は、言い寄る男の頬を売った。
「近寄らないでッ」
乾いた音がコンテナ内に響く。
「やってくれるじゃねぇか…」
追い詰めた「獲物」からの思わぬ反撃に獣と化した男子たちはたじろいだが、それは瞬時に怒りに変わる。
「まずは従順な雌豚になるまで、徹底的に仕込んでやろうか…」
男の一人が久美子を引きずり起こして立たせると、平手で数回、頬を殴打する。
「きゃッ! いやッ! あぁッ! 痛いッ!」
よろめいて倒れそうになる久美子だが、別の男に捕まり体操着の上から強烈な鳩尾に膝蹴りを打ち込まれる。久美子の愛くるしい顏が苦悶に歪み、激しい嘔吐感に白目を剥いた。
「オラオラ、もうおネンネかよ!」
膝から崩れ落ちた久美子は顔面を蹴り上げられ、あううッと喘ぎながら仰向けに倒れた。唇の端から血をにじませながら、苦痛を堪える少女の顔面をさらにグリグリと踏みつける男はそのサディスティックな行為を明らかに愉しんでいる。6人の獣は自分たちより遥かに力の劣る久美子を情け容赦なくいたぶり続ける。久美子の悲鳴が止むことはなかったが、泣けど叫べど救けは来ない…。