第二章:襲撃-1
小熊久美子が「襲撃」されたのは、ほとんどの生徒が引けて、一部の運動会にかかわる実行委員の数人だけがグラウンドで作業を始めた後だ。
「久美子ぉ、もう大体の準備は終わったでしょ? 帰ろう」
友人の桑原佳美の言葉に、久美子は頷きながらも、ラインカーを押す手を止めなかった。
「うん、もう少しで白線ひき終わるから…佳美先に帰ってて」
生真面目な優等生少女はそう言ってほほ笑んだ。
夕暮れに差し掛かり、日が沈みかけたとはいえ日焼けした素肌はチリチリと痛んだ。ここ数日間は朝から夕まで半袖体操具にブルマ、そして素足姿だ。
(どうして、こんな下着みたいな格好をさせるのかしら?)
久美子は足の裏に時折感じる、小石の感触を踏みしめながら思う。現代では考えられないことだが、平成も初頭の時期にはパンティラインを隠す程度のブルマの着用は高校までの女子に義務化されていたといってもいい。健康的な少女たちがそんな姿を晒せば、性に目覚めた同級生の男子たちの好奇の目がいやがうえにも注がれることは言うまでもなかろう。久美子自身も、男子生徒の猥談や好色に満ちた視線に嫌悪感を覚えている。明らかに女へと変貌を遂げつつある16歳の若い肉体に欲望を覚えるのは、善良な男子だけではない。暴力とサディスティックな欲望に満ちた男のサガも容赦なく掻き立てることを久美子は気が付かなかった。ラインひきを終えた久美子は、足早に日が完全に傾いたグラウンドの片隅の用具室に向かう。ラインカーを仕舞い込み、校舎へ戻ろうとグラウンドに出たその時だ。昼間の喧騒がうそのように静まり返ったそのグラウンドで、久美子は左右後方から現れた男たちに捕まった・・・。
久美子を取り合さえた男は、彼女を羽交い絞めにして抵抗できなくすると、仲間に命じる。
「ほら足を抑えろ!! 足だ!!」
日焼けした少女の素足を抑えた男は、その程よく肉のついた太腿を両脇に抱える。
「いやッ、いやッ! いやああぁぁ〜〜ッ!!」
2人の男に担がれ、まるで浜に打ち上げられた人魚のようにビクビクと身悶える久美子。しかし、同年代の男子2人の手にかかっては少女に逃れることなどできるはずもない。
(だ、誰なの!? この人たちは)
久美子は自分を襲った男たちが何者なのかわからなかった。しかし、学ラン姿に混じって薄汚れた濃紺のジャージを身に着けている輩は、雅昭の通うK工業の生徒であることを物語っていた。
(雅昭の喧嘩相手だわ、きっと!)
「い、いやッ、は、放してッ、はぐぅッ!」
久美子は声を張り上げ、助けを求め…ようとしたが、その口に額に結んでいた青い鉢巻を捻じ込まれる。薄暗くなりかけたグラウンドにはもう誰もいない。詰め物をされた久美子はくぐもった喘ぎをもらすが、そんなことにはお構いなく男たちは捕えた「獲物」を己の巣に連行してゆく。久美子は体操着の裾がめくれ上がりへそが露出し、ブルマが股間に食い込むのも厭わず身を捩ったが、男たちの力には抗い様もなく運ばれてゆくだけだった。