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私の王子様
【ファンタジー 官能小説】

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大好きな人-1


 大歓声の中幕を閉じた成人式を後に、ジェノビアは城の中庭へと急いでいた。
 ドレスの裾を持ち上げ、髪が乱れるのも構わずに中庭の手前まで走り、そこで一度止まって深呼吸する。
 そっと中庭を覗くと、そこには先程の巨大烏と極彩色の鷲、そして3人の男女が居た。

 1人は黒髪に赤い眼の青年、1人は短い赤毛にくりくり黒目の少女、そして……茶髪に赤いメッシュの入った40代の男性。

(来てくれた、来てくれた、来てくれた)

 ジェノビアの視線は40代の男性に注がれている。
 ジェノビアが特別に招待したのはこの男性。
 大好きな大好きな水色の瞳の持ち主。
 南の大陸の最南端クラスタの当主、デレクシス=J=カイザス。
 ずっとずっと大好きで、ずっとずっとアタックしてきたのにずっと子供扱いだったが、やっと成人と認められる日がきたのだ。
 ジェノビアは走って来た事を気取られない様に息を整え、自分最上の笑顔で中庭へ足を踏み入れる。

「おじ……デレクシス様っ!」

 明るい声をかけたジェノビアに、3人は同時に振り向いた。

「ジェノビア」

 ジェノビアに気付いたデレクシスが両手を広げて彼女に駆け寄る。
 その腕に飛び込みたい気持ちをグッと抑えたジェノビアは、ドレスの裾を軽く上げて貴婦人の礼をする。

「ようこそおいで下さいました」

 正式な礼をするジェノビアに、デレクシスは目をパチパチさせた。
 しかし、直ぐに気を取り直すと軽く身なりを整えて正騎士の礼を返す。

「お招きありがとうございます、ジェノビア姫様。私の贈り物は喜んでいただけましたか?」

「はい。他の皆様も大変喜んでいましたわ」

 その2人のやり取りを見ていた赤眼の青年がハッと鼻で笑った。

「なぁに気どってんだよキモッ」

 そんな青年にジェノビアは動揺する事なく視線を向ける。

「呼んでもいないのにようこそいらっしゃいました。大してお構いも出来ませんが、水くらいならいくらでも飲んで下さいね、テオドア」

「お前な」

 あまりにも違う態度にテオドアと呼ばれた青年はガックリ脱力する。

「そちらの可愛らしいお嬢様は初めましてですわね?私はジェノビア=C=ファンと申します」

 最後に残された少女にジェノビアは貴婦人の礼を送り、少女はピッと背筋を伸ばしてシドロモドロに答える。



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