大好きな人-4
だが、ジェノビアにはそれで充分だった。
「んんっ ぁンンッ」
乳首をくりくり弄っていたジェノビアの身体が不意に止まった。
そのままぶるぶるっと震えたかと思うと、ゆっくりと力が抜ける。
「んふぁ」
どうやらジェノビアは感じ易く、イキ易い体質らしい。
「……おじ様ぁ……好き……」
絶頂の余韻に浸りつつジェノビアはうっとりと呟き、そのままスースーと寝息をたて始めたのだった。
夢の中でジェノビアは精霊人になっていた。
夢の中には沢山の精霊人が居て、皆で森の中に静かに暮らしていた。
まるで、大好きな絵本の世界の様だと思った。
夢の中にはデレクシスも居るが、今よりずっとずっと若い。
夢の中はジェノビア目線の映像だけで、音は全く聞こえなかったが、夢の中のジェノビアはやっぱりデレクシスが大好きだった。
音が聞こえずともデレクシスと話すのは楽しかったし、見つめてくる水色の瞳が大好きだった。
ーアイシテル
ーアイシテル
夢の中のジェノビアはその想いを繰り返す。
ーアイシテル
ーアタシノオウジサマ
涙が出る程幸せな気持ちがジェノビアを満たす。
ただ、同時にどうしようもなく切ない気持ちにも襲われる。
大好きで大好きで、狂ってしまいそうな程大好きなのにどうしようもない、やりきれない気持ち。
(どうして?)
幸せなのに苦しい……相反する感情がジェノビアには理解出来ない。
ーイッショニイタイ
ーイカナイデ
ーイカナイデ
ーイカナイデ
ーイカナイデ
夢の中のジェノビアは引き裂かれそうになる。
「やめてぇっ!」
ジェノビアは自分の出した声に驚いて飛び起きた。
「はぁはぁ……ゆ……め?」
ジェノビアはドキドキと煩い胸を押さえ、反対の手で頬を伝う涙を拭う。
何が悲しくて苦しかったのか思い出そうとしたが、起きた途端に夢の内容が泡の様に消えてしまった。
ただ、幸せで苦しい気持ちだけが胸の中で渦巻いていた。