大好きな人-2
「あ、えっと……アタシ、パルティオ。魔物だけどよろしくぅ」
「まぁ、そうですの。よろしくお願い致します」
大して驚きもせずにアッサリ受け入れたジェノビアに、パルティオと名乗った少女の方が驚く。
「魔物でもオッケー?」
「ええ。魔物も人間も大して変わりませんもの」
産まれた時からジェノビアの周りには沢山の種族が居た。
人間、精霊、魔物、魔獣……なので彼女にとって種族の違いは、性格の違いくらいのレベルなのだ。
「ふうん。アタシ、アンタ気に入った♪パルって呼んでね♪」
「はい。私の事は皆さんノービィと呼びますわ」
「よろしくね♪」
「こちらこそ」
ニコニコと会話しつつもジェノビアの内心はソワソワしていた。
出来ればデレクシスと2人でゆっくり話したいのだが、タイミングが図れない。
いつもならデレクシスの手を引いて無理矢理みんなから引き離すのだが、それは淑女にはあるまじき行動だ。
「デレク王子」
そこへファン国王がやってきて声をかける。
ジリジリしていたジェノビアは一気に気分が萎えてしまった。
国王が来てしまったら当然そっちが優先だ。
ジェノビアは淑女らしく一歩退き軽く膝を曲げ、テオドアとパルティオを連れてその場を後にする。
テオドアは3歳までこの城に住んでいた。
その後も何回も訪れているので城の人達とも顔見知りだし、案内する必要はない。
というか、興味深くキョロキョロしているパルティオにかいがいしく色々説明しているのを見ると、どう考えても自分は邪魔者なのだ。
ジェノビアは疲れたから、と理由をつけて2人から離れ自室に戻る。
「……ふうっ」
部屋に入ると魔法で結界を張って溜め息をついた。
ドレスを脱いで身体をきつく締め付けていた矯正下着を外すと、やっと人心地つく。
ジェノビアは鏡に映った自分に気づき、しげしげと眺めてみた。
矯正下着などなくてもくびれた腰に、母親譲りの爆乳。
手入れの行き届いた金髪に白い肌。
全部デレクシスの為に、ジェノビアが日々磨いてきたものだ。
ただ、問題はデレクシスが欲しいと思ってくれるかどうか。
成人になって初めての挨拶は淑女らしく上手く出来た。
その後も未練がましく残ったりせずにさりげなく去る事もでき、淑女的には上々。