大好きな絵本-1
昔々、とても我が儘で乱暴な王子様が居ました。
お城の庭に咲いている綺麗な花を引き千切ったり、透き通った泉に毒を流したり……。
困ったお妃様は王子様に言います。
「そんなに酷い事をしていると、精霊に罰を受けますよ」
しかし、王子様は知らん顔。
「精霊なんて居るもんか。だって見たことないもん」
王子様はのイタズラは益々エスカレートします。
なんと、100年以上も生きている、大きくて立派な木を斬り倒したのです。
これには王様がカンカンに怒りました。
「お前が考えを改めるまでここに居なさい」
王子様はお城の外れにある、小さな小屋に閉じ込められてしまいました。
だけど王子様は気にしませんでした。
「だってボクは王子様だもん」
直ぐに城の誰かが出してくれると思いました。
でも、夜になっても誰も来ません。
お腹は空くし寒いし暗いし……王子様はだんだん不安になっていきます。
王子様は不安なまま眠ってしまいました。
しくしくしくしく
どこからか泣き声が聞こえてきます。
王子様は目を擦りながらボロボロの窓から外を見てみました。
ぼんやりとした光の周りに、沢山の人々が集まっているのが見えます。
ボロボロの窓は曇っていて良く見えなかったので、王子様はドアから外へ出ました。
光の周りに集まっている人々は、シクシクと泣いたり、ジッと光を見つめたままでいたり様々でしたが、どうやら楽しい事ではなさそうです。
「何をしているんだい?」
王子様は人々に声をかけました。
シクシクと泣いている1人が答えます。
「お爺さんが死んでしまったの」
ジッと立っている1人も答えます。
「殺されてしまったんだ。まだまだ元気だったのに」
王子様は少し背伸びをして光の方を覗きました。
そこには長い髭をたくわえたお爺さんが寝ていました。
寝ているお爺さんの身体はお腹から真っ二つになっています。
不思議な事に血は流れておらず、血の代わりに光が漏れていたのです。
しかし、王子様はその不思議な光景に気づきません。
なぜなら、とても腹がたったからです。