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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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9.綻び-4

 悠花自身の視点だけでなく、鏡のせいで第三者的な視点でも醜男に犯されている姿が記憶に刷り込まれており頬が熱くなる。セックスの最中に視界の端で垣間見た鏡の中の悠花は、明らかに男の体を求め、自ら、より深く大きい愉楽を求めていた。そして録画されているスマートフォンに向かって為したセックスフレンドの誓い。
 もう写真だけが悠花のアキレス腱ではないのだ。
(……!)
 脚の間に、また粘汁が垂れ落ちてきた。しかしそれは熱く潤っており、明らかに村本の残滓ではなく、新たに湧出したものだった。
(……いやっ、何これ……、何なの)
 犯された記憶で愛液を溢している。変態男に犯された記憶で淫りがわしくなっている。羨望の目で見られてこそのファッションモデルの自分が……。
 突然の着信音に、悠花の肩は大きく震えた。目を覚ましたあの男が、悠花がいないことに気づいたのだろうか? 恐る恐る着信画面を見ると、それは事務所のスタッフだった。
「はい……」
「あ、瀬尾さん、遅くにすみません。寝てましたか?」
 声音が沈みがちに聞こえたのか、スタッフは深夜のコールをまず詫びた。
「あ、はい……。寝付こうとしてました」
「あー、それはごめんなさい。……突然で申し訳ないんだけど、明日の撮影、14時からの予定だったけど、16時に変更になりました。徳矢さんがその代わり14時からになったんで、入れ替えですね。えっと、その代わりにですね、10時から、CMの打ち合わせが入ったんです。場所は……」
 スタッフは予定の変更を伝えるのを忘れていたようだ。バゼットにウソをついた時に用いた大手化粧品会社のCM起用の話。それが現実になったのだ。スタッフが伝達事項を並べ立てる間に、今日一日の「悪夢」から、徐々に現実の世界に引き戻されていく。そして電話を切ると同時に生理が来た。
 目覚めると、月経による鈍痛と鬱感はあったが、自然と仕事に向かう準備を始める自分がいた。男のアパートからこの部屋に戻ってくるタクシーの中では、男を葬る勇気がなかったのだから、自害して恥辱の懊悩から逃れてしまおう、という気持ちすらあった。生理によって男の受胎を免れたから? 死ぬのが怖くなったから? 自分自身でもそれは分からなかった。だがその日も翌日も、悠花は仕事をこなし続けることができた。ただ、ともすると悪夢の様子が、フラッシュバックしてくる。そして生理中でありながら、後悔と羞恥に塗れながらも、体の奥が潤ってしまうのをどうすることもできなかった。
 すぐにでも男が連絡してくると思っていた。しかし男から電話もメールも無かった。男がこのまま終わりにするつもりはないことは悠花には分かっていた。だが男からは何の音沙汰もない。かといって自分から連絡するわけにもいかない。
 色々なことを深く考えようとすると気がおかしくなりそうだったから、自然と深く考えようとせず、仕事に集中しつつ一週間が過ぎた。写真集発売へ向けてのイベントが始まる。事前に聞いていたとおり、オタクと呼ばれる男たちが大挙してやってきた。その中にあの男が紛れてくるのではないか、そう思ったが、どの会場にも現れなかった。その代わり悠花は、男のせいで耐性ができてしまったのかもしれない、発売イベントでも下品な表情と目線を向けてくるオタク男たちに対して、「心を無にして」応対することができた。写真集が売り出されると、事前のプロモーションが功奏して予約販売分はほぼ完売し、店頭販売分も在庫切れを起こす店舗が続出した。出版元は「もっとイケた」と忸怩たる思いで増刷を進めている。21歳の奇跡的とも言える均整の取れた肢体と、メイクの具合によって愛らしくも大人びても見える美貌は忽ち世の男たちを虜にした。
 ――そして、写真集発売日の夜、悠花の電話が鳴った。


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