意外な強敵-7
「大丈夫だって、沙織なら。ここで小せえとこ見せちまったら沙織に幻滅されちまうぞ?」
「修……」
「沙織の彼氏はお前なんだから、どんと構えてろよ。沙織なら大丈夫だよ」
そして奴は気合いを入れるために、俺のケツを思いっきり引っ叩いた。
涙目で奴を見れば、あの馴染みの不敵な笑み。
ニッと笑うその表情につられて、なんだか自信が漲ってくる。
修の言葉とその表情には、不思議とそういう力があるのだ。
……よっしゃ、俺負けねえぞ!
今の俺は多分背中に炎を背負っているのかも。
それほど、闘志に満ち溢れていた。
「頑張れ、倫平。そして沙織とさ……」
ヒヒヒと意味深な笑みは、最後まで言わずとも伝わってくる。
だから、俺も黙って頷いた。
そう、俺は、このキャンプをきっかけに絶対童貞捨ててやる!
鼻息荒く、後部座席のドアを開け、俺は意気揚々と車に乗り込んだ。
たかが助手席に座ったくらいで動じるもんか!
――そうメラメラ燃える俺の耳には、背後での修と歩仁内のやり取りが届かなかった。
◇ ◇ ◇
「いやー、面白くなってきたな」
「土橋……、あまり大山を煽ったら駄目じゃないの?」
「いんだよ、障害を乗り越えた方が二人の愛も燃えるだろ」
「なんか完璧に面白がってるよね」
「つーか、他人の三角関係だから面白いんだろ」
「まあね。……頑張れ、大山」
そんな二人は、俺の背中を見つめながら、クククと必死で笑いを堪えていた、そうだ。