「アルデンテに勃ってみて♪」 -3
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今 日のシェフは何だか落ち着かない。それもそのはず、メニューに新風を吹き込もうとオーナーのテコ入れがあり、新しい料理人が一人入っ たからだ。そいつは、
『チャオ。わたし、ビアンコ・ロッソです。どうぞ、よろしく』
生粋のイタ飯野郎だった。挨拶がわりに作ってみせた昼のまかない料理「ホタテ貝のリゾット」は驚くほど美味しく て、従業員の瞳に早くも尊敬の色が浮かんだ。そして、シェフの目には嫉妬の種火が。
『とま子さん、野菜の切り口きれいですね。あなた自身もきれいですが』
ビアンコは日本語を流暢に話すが女性の扱いにも淀みがなかった。お愛想に照れ笑いを浮かべてみせると、
『ほんと、ほんと。あなたはわたしの出会った日本人の中で一等賞の美人ね』
ウインクしながら褒め殺し。緑・白・赤の国旗の男は異性に手が早いと聞いてはいたが、ビアンコは噂に違わず、さっ そくあたしに色目をつかってきたわけだ。
そうして初日の勤めが終わるや否や、
『とま子さん、食事に行きましょう。今夜はわたしの就職祝いね。喜びのお裾分けをしてあげますから』
わけの分からないことを言って、さっさと引っ張っていく。
「と、とま子……」
あまりにもスピーディな展開で二の句が継げないシェフを残して、あたしは夜の巷に拉致されていった。
『マンジャーレ。さあ、食べましょう』
ということで、ステーキ・ハウスでお腹を満たし、
『カンターレ。さあ、歌いましょう』
ということで、カラオケで声を嗄らし、
『アモーレ。さあ、愛し合いましょう』
ということで、気がつけばラブ・ホテルのベッドの上。
ビアンコは女のあたしより色白だったが体毛の量が凄かった。特にその胸毛。猿かテメエは、と思っていると、
『おおう、とま子さん、オッパイ大きいねえ』
大口あけて吸いついてきやがった。
『これ、まるでラズベリーね』
夢中で乳首をしゃぶる。右のが硬くなると今度は左をじっくりと。カンツォーネの国の男は、乳頭フェチなのか?
ひ としきり乳首をねぶり尽くすと、今度はビアンコ、両の乳房を丸めるように揉み始めた。
『ピッツァの生地を捏ねるのと同じね』
「あはははは」
笑っている間にもピザ職人は揉む、揉む。揉むったら揉む。そうしているうちに、
「ああん……」
あたしの唇から甘い吐息が漏れた。それを確認したビアンコは、ついばむようなキスを脇腹、おへそ、下腹部へと移動 させていった。