投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

愛しているから
【青春 恋愛小説】

愛しているからの最初へ 愛しているから 11 愛しているから 13 愛しているからの最後へ

ドウテイ脱出への道-5

見れば、黒いミニバンが入ってくる所。


テレビのCMなんかでよく見るそれは、ピカピカに黒光りして、いかにも買ってまだ間もないように見えた。


そのミニバンは、ぐるりとロータリーを回ると、俺達が屯っている前でゆっくり停まった。


みんながぽかーんと口を開けてそのミニバンを眺めている。


スモークが張られているせいか、中がよく見えなかったその車。突然助手席のドアがガチャリと開いたと思うと、歩仁内がストンと降りてきた。


「ごめんね、遅れちゃって。荷物積むのに手間取っちゃった」


半袖パーカーにカーキ色のハーフパンツの歩仁内は相変わらず爽やかに白い歯を見せて笑っていた。


「遅えよ、歩仁内」


修はそう毒づきながら、持っていたボストンバッグで歩仁内の足を攻撃しようとするが、


「ごめんって」


と、笑いながらヒョイとそれをかわし、サッとバッグを受け取ってしまった。


そしてそのままひょいと、車の一番後ろのトランクルームのドアを開けて、


「じゃあみんな、荷物後ろに積んで?」


と言って、修のバッグをはじっこに積んだ。


「え、車で行くの?」


ポニーテールを揺らしながら沙織が言う。


「そう、電車で行くにも不便なとこにあるし、車だと買い忘れがあってもすぐに買いにいけるだろ?」


「え、じゃあ歩仁内くんのお家の人が車出してくれるってことなんでしょう? ご迷惑なんじゃ……」


沙織が心配そうにそう言い掛けた途端、今度は運転席の方からドアが開いた音がした。


「あー、大丈夫大丈夫。オレ、暇人だから」


そう言ってみんなの前に現れた若い男。


歳は二十歳前後らしく、細くて背が高くて、歩仁内とよく似ている、爽やかなイケメンだ。


クリッとした瞳が小動物みたいなとこも歩仁内そっくり。


人見知りなんて縁のなさそうなその男は、小さく頭を下げてから、


「初めまして、オレ、楓(かえで)の兄の歩仁内州作(ぶにうちしゅうさく)って言います。ヨロシクね」


と、歩仁内によく似た顔で、ニッコリ笑った。







愛しているからの最初へ 愛しているから 11 愛しているから 13 愛しているからの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前